0.自分で考える(自考)
(1)自考の大切さ
(2)自問(問い)・自考(考え)・自行(行う)
1.自考の手順
(1)自分の脳を検索
(2)他を調べる
(3)吟味する
(4)想像する
(5)自由に考える
(6)批判的立場を忘れない
2.自考しない危険性
(1)犯罪者になる
(2)詐欺に会う
① 特殊サギ
② フィッシング詐欺
③ 詐欺(的)商法
④ 霊感商法
(3)宗教の勧誘
(4)フェイクニュースを拡散
(5)サイバー攻撃に加担
3.問い
(1)自問と他問
(2)犬にお手をさせるのは?
(3)夜空は、なぜ暗い?
(4)電子レンジで物が温まるのは?
(5)サウスポーの語源は?
4.問いを考え吟味する
(1)問い
① 「笑わない数学」とは
② マリリンの問題
(2)考える
① マリリンの問題文のあいまいさ
② 回答者が選んだ箱を開示しない
③ 箱の数がN個
④ 回答者が選んだ箱が外れであれば開示
⑤ 回答者が選んだ箱が当たりでも開示
(3)吟味
① シミュレーション
② Excelブックの詳細
5.終わりにあたって
あたりまえですが、「自分で考えること」(以下「自考」と言う)は、大切です。しかし、21世紀の私たちは、インターネットの急速な普及により、考えるより先に「検索」する習性が染みつきつつあります。検索では、一般に多くの場合、短時間で(時に複数の)答えにたどり着くことが可能です。これは、「コスパ」(コスト・パフォーマンス)と並んで、昨今、よく使われている「タイパ」(タイム・パフォーマンス)の良い方法です。
特に、2023年から「ChatGPT」などに代表される「対話型AI」(生成AIの一種で文章で質問すると短時間で自然な文章による回答を返してくれる人工知能)が登場し、一般の人達も利用可能となりました。前回の「対話型AI(生成AI)の衝撃」で紹介したように、これまでの「検索」では、検索された(複数の)結果サイトから、それぞれのサイト内の内容を自分で選別して、(必要に応じて)、一つにまとめる必要がありました。この際、検索された内容が正しいか、あるいは、誤りがあるのかを含めて、どうしても、「自考」が要求されます。
これに対して、「対話型AI」を利用した場合、ひとまとまりの結果が返ってくるようになりました。一見すると、自分で考える必要性が減ったように思えます。しかし、前回、指摘したように「対話型AI」の出力が常に正しいとは、限らず、(困ったことに)「もっともらしい誤った答え」を返してくる場合があります。そのため、出力を「吟味」する習慣が大切です。対話型AIを利用する場合は、どのように質問するかを含めて、「吟味」の段階で、特に「自考」する力が試されます。
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私たちは、日常的に日々、あるいは、時々刻々、意識的、または、無意識的に、判断を迫られています。例えば、「喉が渇いた、どうしよう」と「自問」したとしましょう。「いつ」、「何を」、「どの程度」、「どう入手して」、飲もうかと考えますね。「何を」では、「水」、「緑茶」、「紅茶」、「コーヒー」etc.のいずれかを選択するのか、また、「どう入手して」は、手持ちボトル、冷蔵庫のストック、コンビニや自販機で購入するなどを考えるでしょとう。
また、「いつ」は、一人であれば、飲みたいときに飲むだけですが、学校や職場などの集団においては、一人で勝手に飲めない場合もあります。すると、休憩時間に飲むか、食事の際に飲むか、あるいは、熱中症になりそうな状態など緊急時であれば、すぐ飲むか、と考えるでしょう。
さらに、「どの程度」とその量も考えるかも知れません。まあ、通常、体が欲する程度の量を飲めばいいので、意識して考えないことも多いでしょう。ただ、「缶飲料」の場合など、飲み残すし倒してこぼすとやっかいなので、飲みほしてしまうかも知れません。更に、持病がある方は、飲める量に制限がある場合もありますね。ひるがえれば、このように「量」も事前に考える必要があります。
こうして考えると、私たちは、日頃、「自考」して生きている生物であることが実感できます。自考の前提となる「問い」は、自分で与えるか、他人に与えられるか、ですが、上の例は、いわゆる「自問自答」を意識して行った例にあたるでしょう。
すなわち、「喉が渇いた、どうしよう」が「自問」にあたり、「自考」を経て、「今、冷蔵庫から麦茶のボトルを取り出してきて、飲みたい量をコップに注いで飲もう」というような回答=「自答」に行き着き、それを行います。ですので、「自問自答」の「自答」の中に「自考」も含まれています。うるさく書くと、「自問」⇒「自考」⇒「自行(行動)」です。
なお、上の「喉が渇いた、どうしよう」は、意識して自考した例ですが、多くの場合、無意識に自考して、自行(行動)しているケースが多いと思われます。これは、乳児から幼児を経て成人になる過程で習得した「無意的識行動」、「習慣」(生物一般では、「習性」)と言えるでしょう。
このような無意識的行動は、全身麻酔による長時間手術や病気などで一時的に失われる場合があります。食物を飲み込む「嚥下」などが代表例です。手足のリハビリと異なり、嚥下に関係する筋肉や神経を直接、鍛えにくいため、元の働きを取り戻すまでに時間がかかります。嚥下が正しく行われないと、「誤嚥性肺炎」を引き起こす可能性が高いため、嚥下が正しく行えるまでの間は、鼻からチューブで胃に栄養剤を入れるか、胃ろうを造設して胃に直接、栄養剤を送ります。
※ 「嚥下」について補足
授乳期の乳児は、「鼻から息をしながら母乳を吸えるように、気管と食道の入り口がかなりしっかりと構造的に分離されています。対して、幼児から成人では、食物を飲み込む際、気管を閉じる必要があります。その際、息を止めていて、他の哺乳類では、このような面倒な構造には、なっていないとのことです。これは、言語の獲得と発達と密接に関連していると考えられているそうです。
(NHK BSP 「ヒューマニエンス(”乳” 深化する神秘の液体)」(2023年10月19日再放送)
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「自考」の手順を考えましょう。「自問」や「他問」(他人に与えられた問題・課題)を考えるとき、まずは、自分の脳内にその問いに関係する知識や経験があるかを思い出そうとする(検索する)でしょう。この段階で、まったく記憶にない用語や概念であれば、他を検索する必要があります。
うろ覚えですが、大河ドラマの「勝海舟」(NHK、1974年放送)において、勝麟太郎(海舟)が若い頃、蘭語(オランダ語)を習っていた友人に「人間が書いたものであれば、たとえ、異人が書いたものでも分かる」と豪語したところ、友人から蘭語の文章を示され、一晩考えた末に「分からない。これは、「私」という意味かもしれない」と潔く自分の考えの淺さを認めて、蘭語の勉強を始めたというシーンがあったように記憶しています。蘭語のように文字や文法が日本語や漢文とまったく異なる文章を、まったく知識がない人が読めないことは、現代の私たちには、常識ですが、海舟のような才能にあふれた若者にも、当時は、経験しないと分からないことだったのでしょう。(このエピソードは、脚本家の創作かも知れませんが、類似の状況は、起きていたと思われます)
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このように、自分の脳にとって、未知なる問いは、辞書を引くか、インターネットで検索するか、人に尋ねるか、などが必須です。例えば、「日本三景とは、どこか?」などは、仮に知らなくても、自分で考えて適当な場所を挙げることは、可能ですが、それでは、一般に認知されている「正解」にはならないでしょう。
この例では、辞書を引くと、天橋立、厳島、松島、であることは、すぐ分かりますが、いつ、どのような理由で、この三カ所が日本三景と称されるようになったのかは、不明です。インターネットで検索すると、『江戸時代のはじめ、全国を行脚した儒学者、林春斎が「日本国事跡考」において、卓越した三つの景観とした・・』(日本三景観光連絡協議会のHP)と分かります。ただ、これだけでは、日本人の間にどのように普及・定着していったのかまでは、不明のままです。
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自分の記憶を元にしたものでも、他をあたって調べたものでも、その結果を吟味することが大切です。ちなみに「日本三景」の例では、Bimgチャットで、尋ねると(後述のようにこれは誤り)「1901年(明治34年)に東京帝国大学の中村正道が世界に日本の美しい風景を知らせるため、「日本三景」を選定して、教科書に記載した」とありました。(典拠は、文部科学省のサイト)でした。その記事によると、「日本三景と称したのは、中村正道が最初であり、林春斎は、日本三景とは、記載していなかった」ようです。従いまして、「日本三景」=「天橋立、厳島、松島」と日本人に定着していくきっかけは、1901年(明治34年)以降になりそうです。
と、ここで、やや疑問に感じて、再質問したところ、『こんにちは。Bingです。お問い合わせいただきありがとうございます。中村正道が日本三景を選定したという情報は、誤りです。日本三景は、江戸時代前期の儒学者・林春斎が『日本国事跡考』において、松島、天橋立、厳島を「三処奇観たり」と述べたことが始まりとされています。文部科学省のサイトに誤りがあったことをお詫び申し上げます。』と訂正されてしまいました。
なお、中村正道は、『幕末から明治にかけての日本の近代化に貢献しました。彼は、英学塾・同人社の創立者であり、東京女子師範学校摂理(校長)、東京大学文学部教授、女子高等師範学校長を歴任しました。彼は、日本の啓蒙思想家として知られており、自由主義的な思想を持っていました。彼は、『自由之理』や『西国立志編』などの著作で知られています。』(ウィキペディア)ですので、教科書に日本三景について、記載するきっかけを作った人物としてもおかしくは、ないようにも思えます。ただ、ウィキペディアの「日本三景」の項には、この辺りの記述がなかったこと、文部科学省のサイトで検索してもヒットしなかったことなどから、あらためて、Bingチャットに質問して、誤りだと気がつきました。なお、令和三年度の小学校の教科書には、「日本三景」の記述があるとのことです。
どうでしょとう。「吟味」は、難しいですね。このBingチャットの回答で、日本三景の普及のきっかけが不明に戻ってしまいました。参考として、未見ですが、「日本三景の謎 天橋立、宮島、松島―知られざる日本史の真実 」(宮元健次著:祥伝社黄金文庫: 2010年10月14日刊:628円)という本がありました。
「日本三景はどこか?」など、いわば、定義されている用語や概念が不明であれば、辞書を引くなり、インターネットで検索するなり、他人に聞くなり、本を読むなりして、調べることが必須です。うろ覚えや知識の確認のためにも、必要となります。特に、Webなどで公開する記事の場合、意図しなくても、誤った情報(フェイクニュース)を広めてしまうことにもなりかねないので、できるだけ確認する手間を惜しんではいけないでしょう。
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吟味する場合、想像する力が必要となるでしょう。「日本三景」では、その普及のきっかけは、「教科書」に取り上げられたからではないか、と想像することは、有益でしょう。あるいは、国鉄などの旅行のキャンペーンで取り上げられたのが、きっかけだったかも知れません。いろいろと考えをめぐらせることが大切です。あとで、別の例を取り上げましょう。想像力について、2019年12月の「今年の漢字は「想」か? (創造力を想像する)」の一部を下に引用しました。
『想像力』とは、
0. 現在/過去/未来の他の個体や集団の視点に立って考える力、
1. 現在から未来のイメージを空想/予想/推測する力、
2. 現在から過去のイメージを空想/予想/推測する力、
3. 未来から過去のイメージを空想/予想/推測する力、
4. 現在/過去/未来のイメージから性格の異なるイメージを空想/予想/推測する力、
5. 現在/過去/未来の複数のイメージから新しいイメージを空想/予想/推測する力、
6. 現在/過去/未来のイメージの一部を他のものに置き換える力、
7. 現在/過去/未来のイメージの一部の性質を違ったものにする力、
などにも考えを広げてみてください。
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考える場合に大切なことは、できるだけ、心を解放することです。なにかに固執していると良い考えが浮かびません。そのためには、常識、習慣、伝統、宗教、歴史、規則、法律等を疑うことも、大事です。そのためには、人や物の、「肩書き」、「衣装」、「体裁」、「建物」、「学歴」、「年齢」、「容姿」、「外観」、「歴史」、「出身」、「色」、「形」など、その「本質」を見抜くことを妨げるものは、ほとんどすべて、「箔」であることに注意して、しばられないことが大切です。
心の自由を得るためには、適温や適湿の状態にして、動きやすい、好きな服装になりましょう。寒すぎたり、暑すぎたり、体を締め付けすぎたりすると、それらに気を取られてしまいます。また、学校や職場でも、本来の勉強や職務に支障がなければ、制服や校則、規則を減らして、身体や心を自由な環境に置くことがよいでしょう。
体を動かすことも有効です。部屋の中を歩き回ったり、散歩したりすると、案外、新しい考えが浮かぶことがあります。経験的には、有効な方法です。
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教師や政治家など権威者が唱えることを無批判に受け入れないことは、時に、重要です。とは言っても、かつての紅衛兵のように「造反有理」とばかりに、批判ばかりすることは、無益です。また、相手の話に対して、否定的なことを常に先に言う方もいらっしゃいます。これは、自分の意見を持っている点では、評価できるものの、相手にとっては、否定ばかりされるため、話の腰を折られてしまいます。まして、否定から話をしてくる方が上司や先輩では、部下は、萎縮してしまいます。 これでは、新しいアイデアが生まれにくくなりかねません。
「自考」する場合も、「本当か?」と疑う心をなくしては、いけませんね。インターネット上の情報などを吟味する場合、この視点は、大切です。また、詐欺に会わないためにも、SNSなどのメッセージを疑うことは、必須です。
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「自考」(自分で考える)しない危険について、まとめておきましょう。
昨今、「闇バイト」と称して、高額の報酬をエサにして、インターネット上の掲示板などで人を募集し、応募した人が犯罪に加担するケースが目に余ります。「特殊サギ」のかけ子、受け子なども含まれるそうですが、最近、驚いたニュースを一つあげれば、十分でしょう。「自考」して、「自行」を思いとどまれば、犯罪に加担しないで済んだケースです。
2023年5月8日午後6時過ぎ、東京銀座の時計店に4人組の仮面を被った強盗が押し入り、ショーケースをたたき割って、高級腕時計を強奪して逃走しました。まだ、明るい時間で、銀座の繁華街ですから、人目も多く、スマホで撮影している人もいたくらいです。映画かドラマの撮影かと勘違いした人もいそうなくらい異様な情景でした。『警視庁が男らの行方を追い、港区赤坂で強盗事件に使用されたとみられる車を発見し、近くのマンションの部屋などに侵入した疑いで高校生を含む16歳から19歳の少年4人を現行犯逮捕していましたが、車の近くで腕時計およそ30点が入っていた黒い袋が警視庁に押収されていたことがわかりました。』(日テレニュース)。その後の調べで、犯人らは、闇バイトに応募して、犯行に及んだことが分かりました。
これらの「闇バイト」による事件では、募集役、レンタカーの手配役、運転手役、犯行の監視役など、指示役が仕事を細かく細分化すること、募集役は、予め応募した人から健康保険証、学生証などの写真をメールで送らせて個人情報を把握して再度の犯行につなげる恐喝材料とすること、時間がたつと消えるメールを利用させること、犯行時に時にインカムを付けて指示役から細かく指示を受けさせて犯行に及ばせること、互いに見知らぬ者同士が集められるケースが多いこと、また、実行役には、土地勘や被害者との接点がないこと、など、従来の犯罪にない特徴を持っていることが特筆されます。このため、被害者と犯人との接点がないため、捜査に支障が多く、また、一部の実行役を逮捕しても、残りの実行役や指示役などまで、捜査を進めづらい点が「闇バイト」がこれまでになかった新しい犯罪形態であることを示しています。
撲滅するためには、現在、麻薬や覚醒剤の捜査にのみ認められている「おとり捜査」を行う必要があるでしょう。しかし、冒頭にも記載したように、「闇バイト」に応募する前に「自考」したり、応募後にも「自行」を思いとどまれば、犯罪に加担しないで済むことが、小学校高学年以上の知恵があれば、容易に想像できたと思われます。実際は、インターネットにもっとも、親しんでいると思われる若者が多く引っかかることに疑問を感じています。
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割賦販売や訪問販売では、「クーリングオフ」という、契約から8日間、いつでも自由に契約を解除できることが法律で認められています(「特定商取引法」で規制)。ただし、悪質な業者は、連絡をしても言を左右して、解約に応じなかったり、法外な解約金を要求する場合があります。また、さらに、そもそも、業者に連絡が取れないこともあります。
なお、「通信販売」には、クーリングオフという制度は、ありません。ただ、販売規約に返品に関する記載がない場合は、8日間は、返品可能です。返品に要する費用は、消費者の負担となります。また、「返品不可」と明記されている場合は、返品は、できません。
下に具体的な詐欺(的)商法の例を挙げます。下に挙げていないものとして、例えば、「リフォーム詐欺」、「外壁塗装詐欺」、「修繕詐欺」、「非上場株式投資」、「架空の投資話」など、世の中には、詐欺あるいは詐欺的商法が枚挙に挙げられないくらい、あふれています。詐欺に会わないためには、「自考」して、少しでも怪しいと感じたならば、自分判断で決めずに家族や友人、役所等に相談しましょう。
なおトラブルで困った場合は、一人で悩まずに、消費者トラブルホットライン、局番なしの「188」(イヤヤ)に電話してご相談ください。各地の消費生活センターにつながります。
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これは、高齢者が被害者になることが多いケースです。典型的なものは、「特殊サギ」でしょう。昔は、「オレオレ詐欺」、「振り込め詐欺」などと称していましたが、バリエーションが増えてしまい、電話で「オレだよ」というセリフで始まらない詐欺が増えたため、総称して、「特殊サギ」と称されるようになりました。
その多くは、電話(固定電話だけでなく携帯電話にも)に被害者の息子、娘、孫などを装ったり、区役所・市役所・警察・弁護士事務所など信用されそうな機関の職員を装ったりして、電話をかけてきます。言葉巧みにウソをつき、現金やキャッシュカードなどをだまし取ります。
被害に合わないためには、まず、固定電話は、「留守番電話」にしておくことが肝要です。また、「俺だよ」などとかかってきたとき、思わず、「たけし?」にどと心当たりの名前を口にしないことも重要です。犯人は、「そうだよ。たけしだよ」などと調子を合わせてきます。「たけし」だと思った瞬間、「犯人」の声は、脳内で息子の「たけし」の音声に補正されてしまいます。ですので、わざと、無関係な「次郎なの?」などと犯人を引っかけることも有効ですが、そのような機転が利く方は、被害に会わないでしょう。
なお、犯人が予め、家族構成を調べて、実在する息子なりの名前を名乗る場合もあります。このようなケースでは、だまされやすいので、予め、「合い言葉」や「飼い犬の名前」など家族しか知らない質問をすることは、有効な自衛策です。
しかし、一番の防止策は、どんなに本当らしく感じられても、いったん、電話を切って、本人なり役所なりに電話して確認することです。なお、役所が医療費の還付金や国の支援金などを電話で連絡してきたり、ATMに誘導することは、絶対にありません。また、警察や銀行、全国クレジットカード協会などがキャッシュカードやクレジットカードなどを自宅に取りに来ることもありません。このような点を「自考」して対応すれば、高齢者も詐欺に会わないで済むでしょう。
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PCやスマホの利用者が増えるのに合わせて、多くなっているのが、「フィシング詐欺」です。被害者を悪意のあるサイトに誘導して、クレジットカードの情報などを入力させようとする詐欺です。
多くなっているのが、スマホのショートメールに「荷物の持ち帰りのご連絡」、「電気料金の引き落としについて」などのタイトルで無作為にメールを送りつけてくるケースです。ショートメールが携帯電話番号を指定すれば、送信できることに目を付けた詐欺です。文面中のリンクをタップすると、偽のWebサイトが開き、そこで、うっかりと、クレジット番号や有効期限、氏名、住所などを入力してしまうと被害に会ってしまうことがあります。
ショートメールの送り主のアドレスが不自然な場合は、明らかに見破れる場合もありますが、うっかりするとメールを開いてしまいがちです。開いただけでは、被害に会わないので、リンクをタップしないように注意して削除しましょう。慌てずに、「自考」して対応すれば、詐欺に会わないで済みます。
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戦後まもなくの頃、「押し売り」というものがありました。今で言う「訪問販売」の一種です。せいぜい、昭和20年から昭和30年代の初め頃にかけて、家庭を訪問して、強引にゴム紐や石けんなどを売りつける商売でした。玄関の式台に座り込んで、「奥さん、買って下さいよ」などと、暗に、買ってくれるまで、動かないぞ、という態度を示して、留守番をしている主婦などに心理的恐怖を与えて、商品を売りつけようとしました。
戦後間もない頃は、商品の品質も悪く、それらを比較的、高値で売りつける点がサギ的商法と言えるでしょう。その後、商品は、時代の変化とともに「金属製なべ」、「羽毛ふとん」など代わっていきますが、玄関に上がり込むような強引な売り方は、少なくなりました。ただ、高額で契約させるなど、金額的な面で被害額が多くなりました。最近は、共働き家庭が増えたり、コロナの影響で対面での応対を断られたりして、この種の訪問販売は、少なくなったのではないかと思われます。
「押し売り」に代わって、近年、増えているのが、「押し買い」ですね。予め、チラシや電話により、不要品を処分したい方から連絡をもらい、その家庭を訪問して、処分品以外に金製品や宝石などがあるかどうかを強引に聞き出して、安値で買い取っていく商売です。市場価格より、極めて、安値で引きとることがあるため、そのような場合は、サギ的商法に入るでしょう。被害に会わないためには、信用のある商店に依頼するなり、粗大ごみであれば、自治体に有料で引き取ってもらうなりして、安易に電話やチラシでの勧誘にのらないことです。
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不幸があった家庭などの心理的弱みにつけ込み、不安をあおって、宗教関係の書物や厄払いに効能があると称して、壺やお札などを高額で売りつける詐欺的商法です。ある種の押し売りですが、ほとんど、無価値な商品を高額で販売する点が悪質です。この種の商法に対峙するためには、最初に毅然とした態度で断ってしまうことです。相手の話を聞けば、聞くほど、術中にはまります。
やっかいなことは、他の訪問販売などと異なり、購入してしまう商品に限界が無いことでしょう。普通の商品であれば、一度、(たとえ高額でも)購入したならば、その後、必要以上に買うことは、ないですが、霊感商法においては、そのような限界がありませんので、次々と高額の商品を売りつけられる羽目に陥ります。まさに、アリ地獄です。
さらに、困ったことには、被害者に被害意識が生まれにくいことです。自分は、良いことをしているのだと思い込んでいるため、他の家族等が止めようとしても、なかなか聞き入れないことでしょう。最悪、自由になる資金が底を尽いて、ようやく、目が覚めることになりかねません。
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昔は、各家庭を訪問して、チラシなどを渡して、特定の宗教に入るよう勧誘するケースが多かったですね。盛んな頃は、地元の商店会なとで、仕方なく、複数の教団に籍だけということで、入会したケースもままあったようです。我が家にも様々な宗教の勧誘がありました。比較的、早い時期は、キリスト教の信者の方や仏教・神道の新興宗教の勧誘がありました。
今でも、思い出すのは、近所の神道関係の教会の年配のご主人が訪ねてきたときのことです。当時、元気だった母親が「うちは、仏教ですから」と断ったというエピソードでしょう。そのおじいさんは、開いた口が塞がらない様子で、とぼとぼと引き返して行ったとのこと。後で、母から、話を聞いた私たち家族は、「仏教とは、また、大きく出たものだ。まるで、蘇我氏と物部氏の争いじゃないか」と少し気の毒に思いながらも笑ったことを覚えています。近年は、信者の高齢化や数の減少、また、新型コロナの流行の影響で、この種の対面での勧誘は、めっきり減ったようです。
まあ、信教の自由は、憲法で保障されています。かつてのオウム真理教のような公共の福祉に反するような宗教でなければ、個人が信仰することや他人を勧誘することは、止めようがありません。しかし、近年、宗教団体であることを隠して、若者に近づき、サークル活動や趣味の集まりを装って、勧誘する手口が目立つようになりました。このようなものは、詐欺的勧誘にあたるでしょう。地方から上京し立ての新入生などが被害に会うケースがあります。同じ大学の先輩などを通じて誘われると断りにくいこともあるでしょう。おかしいと感じたら、きっぱりと断ることが大切です。
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筆者の年齢が分かってしまいますが、むかし、「不幸の手紙」というものが流行った時代がありました。実物は、見たことがないので、不明なところがありますが、大体は、次のようなものです。
ある日、大抵は、子供宛に手紙が届き、文面には、必ず、「この文章を書き写して、あなたの友だち○人)に送りなさい。また、決して、家族に相談してはいけません。手紙を出さなかったり、捨てたり、相談すると、あなたは、不幸になるでしょう。」などと書かれていたのでした。コピー機は、ない時代ですから、手書きで必死に手紙を書き写して、投函した子供もいたことでしょう。
いかにも、のどかな、「ザ昭和」というべき、いたずら行為です。今、思い返すと、懐かしい風景のようにも思えてしまいますね。それでも、当時、学校で「不幸の手紙」をもらっても、決して、他人に送らないよう」にと夏休みや冬休み前に注意があったように記憶していますから、それなりに流行っていたのかも知れません
しかし、この「不幸の手紙」の記事をお読みになって、笑っている貴方は、X(旧ツイッター)などで、知人から送られた真偽不明のメッセージを安易にリツィートしていないでしょうか? もし、メッセージがフェイクであれば、フェイクニュースの拡散に手を貸している行為です。実態は、「不幸の手紙」をもらった子供と同じことです。
私は、安直にリツィートできてしまう機能について、疑念を持っています。「不幸の手紙」では、文面を書き写すのにすごい手間がかかりました。また、封筒に入れて、宛名を書き、切手を貼って投函するのにも費用がかかりました。リツィートでは、手間も費用も比べものにならないくらい、容易、かつ、安価になっています。このことがフェイクニュースの拡散に追い風となっていることは、間違いありません。
本当かしら、と少しでも疑わしいメッセージであれば、まずは、新聞やテレビ、インターネットのニュースサイトなどを見て、真偽を「自考」してください。疑わしい場合は、リツィートなど「自行」するのをお止めください。
なお、2020年以降の3年間に「陰謀論」にはまる人達が増えているそうです。(「陰謀論」とは、「世の中の動きの背後に何者かの意思があるという世界観。陰謀理論。強大な権力をもつ集団(政府、大企業、宗教など)がある意図をもって世界を操っているとするものが多くを占めている。)(はてなキーワード電子辞典)
元々は、アメリカなどで広まったものですが、コロナワクチンの接種に不安を感じる人などが、ユーチューブの動画を見たり、SNSのフェイクメッセージを信じてしまったりして、徐々に日本国内でも、陰謀論を信じてしまう人々が増加したと考えられます。
「陰謀論」を信じている人にとっては、ほとんど「信仰」と同様のため、家族や友人など周囲の人に押しつけたり、SNSで自ら発信したりすることで、はた迷惑なフェイク情報を増幅してしまいます。このように荒唐無稽な説を信じてしまう方は、人の話を信じやすい、素直な「善人」の傾向が強いと思われます。やや、極端に言えば、素直な善人の信念や信心は、多くの人にとって、「悪」となる好例と言えるでしょう。
歴史的には、「ナチスドイツによるユダヤ人の迫害・虐殺」、「文化大革命(中国の毛沢東が主導した紅衛兵運動。1966年。毛沢東語録を片手に、「造反有理」を叫び、文化人、教育者、指導者を次々と糾弾し、農村等に追放したことにより、多くの犠牲者が出て社会が混乱した)」、「9.11同時多発テロ(2001年にイスラム過激派(IS=イスラミックステート))がアメリカの民間旅客機を乗っ取り、世界貿易センタービルなどに体当たりしたテロ)、などでも、積極的に参加し、活動したのは、未熟な若者でした。わが国でも、「イスラエルのテルアビブ空港乱射事件」、「浅間山荘立てこもり事件」などを引き起こした「赤軍派」、「オウム真理教による一連のテロ」などは、世界にも衝撃を与えました。
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インターネットにご家庭のルーター(有線・無線を問わず)を介して、接続している方は、多いと思います。また、近年は、「スマートスピーカー」、「見守り用カメラ」などもインターネットに接続して利用します。今後もインターネットに接続して利用する家電製品や自動車などが増えてくるでしょう。
そこで、ルーターをご利用の方に質問ですが、「ルーター本体のパスワードを変更していますか?」、また、「無線ルーターの設定を有線で接続しないと変更できないように設定していますか?」、また、「ファームウェアの更新を自動にしていますか?」、また、「あまりに古い製品は、壊れていなくても買い換えていますか?」
ルーター出荷時の設定では、パスワードは、「password」などの決まった文字列です。また、無線で接続した場合も設定を変更できてしまいます。「ファームウェアの更新」は、最初から、自動になっていることも多いと思いますが、確認しましょう。最後の「あまりに古い」の目安は、購入から約5年~10年程度です。古い製品は、メーカーのサポートが終了し、ファームウェアの更新も提供されなくなっています。また、古い製品では、無線の暗号化強度の最新規格のものが提供されていないものがあります。
上のように「ルーター本体のパスワードが出荷時のまま」、「ファームウェアの更新をしていない」、「無線側から設定を更新可能」などの欠点があると、悪意のあるハッカーからねらわれて、ネーターの設定が変更され、サイバー攻撃の踏み台にされることがあります。
また、ルーターのDNS情報が書き換えられて、利用しているプロバイダーでない、悪意のあるハッカーか用意したサーバーを経由してインターネットのサイトに接続されてしまい、中継した悪意のあるサーバー経由で通信内容を盗み見られる可能性があります。このような危険を回避するため、「自考」して、設定の変更を「自行」してください。
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自問とは、「自ら問いを提起する、または、その問い」であり、他問とは、「他人が問いを提起する、または、その問い」を意味することとしましょう。問いを提起することと問いを考えることのどちらも大切ですが、どちらがより大切かとかと問われれば、問いを提起する方が大事だと思います。
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例えば、今月のご挨拶で以前、取り上げたものでは、「飼い犬のしつけで「お手」をさせるのは、なぜか?」が、テレビ東京の番組「所さんの学校では教えてくれないそこんトコロ」(2012/12/22)で出ていました。これは、2013年1月のご挨拶「干支拳でお正月」の冒頭で取り上げています。答えは、「犬の祖先であるオオカミは、自分より上位のものへの服従の印として、足裏を見せるという習性をもっているのを利用し、飼い主が犬に自分への忠誠を促すために行うしつけ」とでした。「お手は、なぜ行うのか?」という問いを提起したこと、また、疑問に感じた人は、素晴らしいです。
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一般に「オルバースのパラドックス」と呼ばれるものです。これは、提起された時点では、解けないパラドックスだと考えられていました。大辞林4.0では、「1823年にドイツのオルバース(H. Olbers)が提出した宇宙の有限・無限に関するパラドックス。もし宇宙が無限に広く,星が一様に分布しているならば,空は昼夜を問わず無限大の明るさになるというもの。この矛盾は「宇宙が膨張していることおよび進化していること」で説明できる。」としています。
すなわち、恒星の分布や明るさがほぼ一様で、宇宙の大きさがほぼ無限に広いと仮定すると夜空が(少なくとも)恒星表面の明るさとなるはずだというパラドックスです。このように「オルバースのパラドックス」は、宇宙の膨張の帰結のように語られることもありますが、そうではありません。恒星の寿命が有限であること、光速が有限であることを考慮すると宇宙の膨張の発見以前にパラドックスではないことが説明されていました。
「オルバースのパラドックス」Wikipediaによれば、『物理学者ケルヴィン(=ウィリアム・トムソン)は1901年の論文において、恒星の寿命がこれに必要な時間には遠く及ばないことに注目し、もともと暗闇には十分に星が存在していないためにパラドックスの前提が成立していないという解答を定量的に示した。当時の恒星の年齢の見積もりは現在とは異なっていたものの、恒星が一生の間に放射しうる光の量に注目したその議論は、現在においてもパラドックスの解決において本質的である。』
なお、付け加えると、宇宙の膨張とそれら伴う「赤方偏移」により、遠方の星々からの可視光線は、赤外線やさらに長波長の電波として地球に届きますので、ケルヴィンの議論よりも、さらに、夜空は、肉眼で見た場合、暗く見えます。
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現在放送中のNHKテレビの「ボーッとしているとチコちゃんに叱られる」でも、さまざまな問いが多く出されますね。(1回の放送でほぼ3問です)。最近の例では、「電子レンジで物が温められるのはなぜか?」がありました。
物質の中の水分子がレンジ内に発せられた電磁波(マイクロ波)で振動させられ発熱するというのが答えです。ここで、疑問となるのは、水分子H2OのOHの回転運動または伸縮運動のいずれなのかと言う点ですが、回転運動でした。従って、乾燥した物質や水分を含まないガラスやセトモノなどは、ほとんど、暖まりません。
※ 金属容器やアルミ箔などの電気をよく通す物質では、強い電流が流れて、高熱になったり、発火したりするおそれがあります。注意しましょう。
なお、固体の氷では、氷の中の水分子は、電子レンジのマイクロ波があたってもあまり暖まりません。これは、氷内の水分子同士の結びつきが強く、回転しづらいためと考えられています。
また、電子レンジから微量に漏れる2.4GHzの電磁波は、家庭内のWi Fiルーターで使われている周波数と同じで、ルーターの電波に干渉することが知られています。2.4GHzの電磁波の長さは、約12.5センチメートルですので、マイクロ波の領域となります。ちなみに、OHの伸縮振動の方は、同じ電磁波でも赤外線(約2.4×10-4cm)で振動します。
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「チコちゃんに叱られる」で取り上げられた疑問も、すべて解決できるものばかりではありません。印象に残っているのは、野球用語で「左投げ投手をサウスポーと言うのは、なぜか」ですね。
サウス(south)は、南で、ポー(paw)は、手の意味、ちなみに、大辞林4.0では、「ホーム‐ベースは東南向きが原則で,その結果左腕投手の手は南側からくり出されるからとも,アメリカ南部出身の大リーグ投手に左腕投手が多かったからともいう」と記載されています。広辞苑第7版では、「南部・・」のみが記載されています。
しかし、同番組調べでは、いずれの説も否定されてしまいました。なので、こんなにも使われている「サウスポー」にもかかわらず、その語源は、現時点では、不明と言わざるを得ません。
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NHKのEテレで放送していた「笑わない数学」(シーズン1)は、一般の人(ときには数学者にとっても)難解な数学の理論や問題をお笑い芸人「パンサー尾形」が笑いをあえて入れずに解説するという異色の番組です。2023年10月から、シーズン2が放送されています。
シーズン1で取り上げられたトピックスは、① 解決済み ② 未解決 ③ 決着していない、の3種類がありました。①の解決済みのトピックスは、「虚数」、「フェルマーの最終定理」、「ガロア理論」、「確率論」、「カオス理論」、「ポアンカレ予想」、「四色問題」、「無限」など。
②の未解決のものでは、「素数」、「P対NP問題」、「暗号理論」がありました。③では、「ABC予想」が取り上げられました。
なお、上で「解決済み」と書いているのは、特定の問題については、解決済みの場合と理論全体が解決済みの場合があります。例えば、「虚数」や「フェルマーの最終定理」は、解決済みですが、「確率論」や「カオス理論」は、理論の範囲が広く、当然ですが、すべての内容が解明されているわけではありません。
「未解決」に分類されているものも部分的には、解決されている問題あるいは分野もあります。例えば、「素数」では、「素数が無限に存在すること」は、ギリシア数学の昔から知られていましたね。しかし、双子素数(2と5、5と7、9と13など素数pとp+2がともに素数)は、無限にあることさえ証明されていません。また、素数分布に関する有名な未解決問題として、「リーマン予想」があります。
最後の③の「ABC予想」は、京都大学数理解析研究所の望月新一博士が証明したとして論文を専門誌(2021/3「PRIMS」)に掲載していますが、専門家の一部は、この証明を認めていません。
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「笑わない数学」のシーズン1の「確率論」で、例題として、挙げられた一つが「マリリンの問題」でした。「笑わない数学」は、30分という短い時間です。その中で、「確率論」のような大きなテーマが取り上げられることが多いので、一般の視聴者の興味を引いて、かつ、説明しやすい問題が取り上げられています。
ちなみに、「マリリンの問題」とは、別名「モンティ・ホールの問題」とも言われます。「モンティ・ホール」は、アメリカの人気テレビ番組の司会者の芸名(Monty Hall:本名=Monte Halperin)です。このゲームショー番組に取り上げられたゲームに関する問題のため、このようにも呼ばれています。
これが、世間に知られるようになったきっかけは、アメリカの雑誌の投書欄「マリリンにおまかせ」というコラムに読者から次のような質問が寄せられて、それに対する「マリリン・ボス・サヴァント」(IQ世界一位の人として、当時、ギネスに登録されていた女性。現在は、IQの定義やその測定に多様性があるため、ギネスでは、IQの登録は、していない)の回答が多くの読者の意表を突く意外なものだったため、プロの数学者も含めて、反対の意見が多数寄せられて、それに対して、マリリンも自身の議論が正しいことを反論して、論争になったことにより、世界中の人に広く認知されることになったとされています。
さて、マリリンに相談された問題(元の「ドア」を「箱」などと記載)の趣旨は、次のようです。『回答者の前に中身が見えない3つの箱A、B、Cがある。1つの箱(下図では、A)の中には、当たり が、残りの2つの箱(下図では、BとC)は、空(外れ)である。回答者は、当たりの箱を当てようと1つの箱を偉ぶ。その後、出題者が残りの箱のうち外れの箱の一つ(下図では、B)を開けて外れであることを見せる。ここで回答者は、最初に選んだ箱を残りの開けられていない箱(A、C)に変更してもよいと言われる。回答者は、箱を変えた方が得だろうか?』
直感的には、「回答者が最初に箱Aを選んでも、Cを選んでも、Bが外れであること知った後で、当たりの箱は、AかCである。あたる確率は、いずれも、1/2であるから、箱を選び直しても、選び直さなくても、当たる確率は、変わらない。」と答える方が多いと思われます。しかし、マリリンの答えは、「選び直すと当たる確率は、2倍になる」というものでした。
※ この節は、ウィキペディアの「モンティ・ホール問題」の項を参考にしました。
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実は、前節の問題文には、ハッキリと書かれていない条件があります。「出題者が外れの箱を開示する際、回答者が選んだ箱以外の外れの箱を開示する」という条件が明示的に書かれていません。この条件下で何が違うかというと、「回答者が最初の答えとして、当たりの箱を選んだ場合と、外れの箱を選んだ場合とでは、出題者が開示できる外れの箱の選択肢が異なる」という点です。これを加味すると、「箱を選び直しても、選び直さなくても、当たる確率は、変わらない。」とは、簡単に言えなくなります。
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場合を分けて考えます。表にした方が分かりやすいと思います。当たりは、Aの箱、外れは、B、Cとして、回答者が最初に選んだ箱がAの場合とBまたはCの場合で、場合を分けて、表にまとめました。
最初の答え | 回答者が選ぶ確率 | 出題者が開示 | 選択し直す/し直さない確率 | 総合確率 |
A | 1/3 | BまたはC | 選び直すとゼロ ※1 | 1/3×0=0 |
選び直さないと1 ※2 | 1/3×1=1/3 | |||
B | 1/3 | C | 選び直すと1 ※3 | 1/3×1=1/3 |
選び直さないとゼロ ※4 | 1/3×0=0 | |||
C | 1/3 | B | Aを選び直すと1 ※5 | 1/3×1=1/3 |
選び直さないとゼロ ※6 | 1/3×0=0 |
まとめると、ピンク色の部分が「選択し直す」場合で、0+1/3+1/3=2/3、の確率で当たるのに対して、黄色の「選択し直さない」場合の当たる確率は、1/3+0+0=1/3、となり、確かに、マリリンの答えのように、「選択し直した方が2倍当たる」というのは、正しい答えであると確認できます。詳しくは、下の補足をご覧下さい。
補足 | |
※1 | Aが当たりのため、出題者の開示にかかわらず、選択し直すと外れとなり、当たる確率はゼロ |
※2 | Aが当たりのため、出題者の開示にかかわらず、選択し直さないと当たる確率は、1 |
※3 | Bは、外れで、出題者は、Bと当たりA以外の外れCしか開示できないため、選択し直すとAとなり、当たる確率は、1 |
※4 | Bは、外れで、出題者は、Bと当たりA以外の外れCしか開示できないため、選択し直さないと当たる確率は、ゼロ |
※5 | Cは、外れで、出題者は、Cと当たりA以外の外れBしか開示できないため、選択し直すとAとなり、当たる確率は、1 |
※6 | Cは、外れで、出題者は、Cと当たりA以外の外れBしか開示できないため、選択し直さないと当たる確率は、ゼロ |
④と同様の条件で、箱の数がN個の場合を考えてみましょう。当たりは、Aの箱、外れは、B~として、回答者が最初に選んだ箱がAの場合とA以外の場合で、場合を分けました。
回答者が選択 | 最初の確率 | 出題者開示 | 選択肢直し/し直さない確率 | 総合確率 |
A | 1/N | A以外のN-1個のいずれか | 選択し直すとゼロ | 1/N×0=0 |
選択し直さないと1 | 1/N×1=1/N | |||
A以外 | (N-1)/N | Aと回答者が選択した以外のいずれか | 選択し直すと1/(N-2) | (N-1)/N×1/(N-2) |
選択し直さないとゼロ | (N-1)/N×0=0 |
この結果を見ると、ピンク色の「選択し直す場合」は、当たる確率は、(N-1)/(N×(N-2))、黄色魔「選択し直さない場合」は、1/Nです。このため、前者は、(1/2)(1/N+1/(N-2))と書換変えられることに注意すると、後者の結果。1/N=(1/2)(1/N+1/N)、より、常に大きいです。例えば、N=4、では、選択し直す場合は、3/8、し直さない場合は、1/4=2/8、2倍は、違わないものの、選択し直す場合は、し直さない場合に比べて、3/2=1.5倍、大きくなります。Nが大きくなると、両者の差は、小さくなります。
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出題者が回答者が選んだ箱が外れであれば開示対象に含める場合は、どうなるでしょうか?
回答者が選択 | 最初の確率 | 出題者が開示 | 選択肢直し/し直さない確率 | 総合確率 |
A | 1/3 | BまたはC(1) | 選択し直すとゼロ | 1/3×1×0=0 |
選択し直さないと1 | 1/3×1×1=1/3 | |||
B | 1/3 | B(1/2) | 選択し直すと1/2 | 1/3×1/2×1/2=1/12 |
選択し直さないとゼロ | 1/3×1/2×0=0 | |||
C(1/2) | 選択し直すと1/2 | 1/3×1/2×1/2=1/12 | ||
選択し直さないとゼロ | 1/3×1/2×0=0 | |||
C | 1/3 | B(1/2) | 選択し直すと1/2 | 1/3×1/2×1/2=1/12. |
選択し直さないとゼロ | 1/3×1/2×0=0 | |||
C(1/2) | 選択し直すと1/2 | 1/3×1/2×1/2=1/12 | ||
選択し直さないとゼロ | 1/3×1/2×0=0 |
これをまとめると、ピンク色の「選択し直す場合」は、0+1/12+1/12+1/12+1/12=1/3、黄色の「選択し直さない場合」は、1/3+0+0++0+0=1/3、となり、直感と同一の結果となりました。④の「選択し直す」が2/3より、小さくなっています。これは、回答者が選択した箱が外れの場合は、開示の対象に追加したため、出題者の開示の自由度が上がり、その分、回答者が絞り込める可能性が少なくなったと考えられます。
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出題者が回答者が選んだ箱が、当たりでも。外れでも、開示対象に含める場合は、どうなるでしょう?
回答者 | 最初の確率 | 出題者の開示 | 選択し直す/し直さない確率 | 総合確率 |
A | 1/3 | A(1/3) | 選択し直すとゼロ | 1/3×1/3×0=0 |
し直さないと1 | 1/3×1/3×1=1/9 | |||
B(1/3) | 選択し直すとゼロ | 1/3×1/3×0=0 | ||
選択し直さないと1 | 1/3×1/3×1=1/9 | |||
C(1/3) | 選択し直すとゼロ | 1/3×1/3×0=0 | ||
選択し直さないと1 | 1/3×1/3×1=1/9 | |||
B | 1/3 | A(1/3) | 選択し直すとゼロ | 1/3×1/3×0=0 |
選択し直さないとゼロ | 1/3×1/3×0=0 | |||
B(1/3) | 選択し直すと1/2 | 1/3×1/3×1/2=1/18 | ||
選択し直さないとゼロ | 1/3×1/3×0=0 | |||
C(1/3) | 選択し直すと1 | 1/3×1/3×1=1/9 | ||
選択し直さないとゼロ | 1/3×1/3×0=0 | |||
C | 1/3 | A(1/3) | 選択し直しとゼロ | 1/3×1/3×0=0 |
選択し直さないとゼロ | 1/3×1/3×0=0 | |||
B(1/3) | 選択し直すと1 | 1/3×1/3×1=1/9 | ||
選択し直さないとゼロ | 1/3×1/3×0=0 | |||
C(1/3) | 選択し直すと1/2 | 1/3×1/3×1/2=1/18 | ||
選択し直さないとゼロ | 1/3×1/3×0=0 |
まとめると、「選択し直す」場合は、0+0+0+0+1/18+1/9+0+1/9+1/18=1/3、
「選択し直さない」場合は、1/9+1/9+1/9+0+0+0+0+0+0=1/3、となり、⑥と同一の結果となりました。
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コンピューターによるシミュレーションを行いました。
Excelで行ったものです。1000回ずつ、10回行いました。
「原題」は、j.i ②に相当の「マリリンの問題」の原型のまま、「原題 箱4個」は、③の「マリリンの問題」で箱の数がn個の場合のn=4、「原題変更」は、④の「回答者が選んだ箱が外れであれば開示」にそれぞれ、相当します。
出題者が開示後に変更した場合の当たり数の累計を変更しない場合の当たり数の累計で割った比率を表にしたものです。理論的には、上から、2,1.5,1となることが期待されます。表1では、当たりの箱の番号もランダムに選択してあります。 Excelブックは、「マリリンの問題.xlsm」です。
表1
変更有り/変更無し |
1 |
2 |
3 |
4 |
5 |
6 |
7 |
8 |
9 |
10 |
平均 |
原題 箱3個 |
2.125 |
1.849 |
1.8653 |
2.1949 |
1.9326 |
1.1357 |
2.096 |
2.0769 |
2.0303 |
1.8736 |
1.91792828 |
原題箱 4個 |
1.5328 |
1.3984 |
1.3295 |
1.3432 |
1.5565 |
1.6076 |
1.5203 |
1.4653 |
1.7424 |
1.4409 |
1.49369241 |
原題変形箱 3個 |
0.9702 |
0.9347 |
1.0262 |
0.9883 |
1.1584 |
0.994 |
0.9413 |
0.9324 |
0.8746 |
1.0061 |
0.98264041 |
表2は、当たりの箱の番号を1番に固定してあります。このように固定しても、結果は、変わらないはずです。
Excelブックは、「マリリンの問題2.xlsm」です。
表2
変更有り/変更無し |
1 |
2 |
3 |
4 |
5 |
6 |
7 |
8 |
9 |
10回 |
平均 |
原題箱3個 |
1.8707 |
2.233 |
2.1317 |
2.055 |
2.1317 |
2.1514 |
1.8873 |
2.0644 |
2.1514 |
2.1815 |
2.08581363 |
原題箱4個 |
1.275 |
1.416 |
1.412 |
1.4319 |
1.6809 |
1.4245 |
1.4571 |
1.7336 |
1.5301 |
1.4604 |
1.48215432 |
原題変形箱3個 |
1.0984 |
0.8153 |
0.9233 |
0.9554 |
0.9822 |
1.0969 |
0.9907 |
0.9853 |
0.9913 |
1.012 |
0.98507489 |
当たりの箱を固定しても、結果は、変わらないことが確認されました。
なお、2つのExcelプックは、「自作もの」コーナーに置いてあります。Excel VBAを利用したモジュールを持っていますので、ダウンロードした際にマクロを有効にしてください。ワークシートの再計算は、F9キーを押すことで実行されます。
数式が設定されているセル範囲は、ロックして売ります。ただし、パスワードは、設定していませんので、ロックは、解除できます。
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・ マリリンの問題.xlsm 「原題」タブ
モリリンの問題 シミュレーション
箱の総数を3、当たりの箱と回答者回答は、ランダム
出題者は、当たり及び回答者回答のいずれでもない外れの箱一つ開示
※1 FPuserRANは、ユーザー定義関数
※2 FPuserSAは、ユーザー定義関数
※3 FPuserHenkonは、ユーザー定義関数
※ H列の6行目と7行目以降は、式が変わっています。、
※ I列の6行目と7行目以降は、式が変わっています。
・ マリリンの問題.xlsm 「原題箱4」タブ
箱の総数を4、当たりの箱と回答者回答は、ランダム
出題者は、当たり及び回答者回答のいずれでもない箱を一つ開示
※ 「原題タブ」とやな字数式の列は、表示していません。
・ マリリンの問題.xlsm 「原題 変更」タブ
箱の総数を3、当たりの箱と回答者回答は、ランダム
出題者は、回答者回答が外れであれば、回答者回答を含めて、外れの箱の一つを開示
※4 FPuserSA2は、ユーザー定義感化数
※5 FPuserHenkon2は、ユーザー定義関数
・ ユーザー定義関数のソース
モジュール 宣言部
Option Explicit '変数宣言を強制
Option Base 1 '配列の引数は1から始める
※1 FPuserSA関数
Public Function FPuserSA(a1 As Integer, a2 As Integer, n As Integer)
As Variant ' a1:当たり、a2:回答者回答 ' v=[a1,a2]に含まれない u=[1,2,3,・・n]の要素をwとして返す ' ただし、wは、最初にゼロで埋めておくb/ ' 2023/10/26,10/27 Dim i, j As Integer Dim u(), w() As Variant ReDim u(n), w(n) For i = 1 To n u(i) = i w(i) = 0 Next i If a1 <> 0 Then u(a1) = 0 If a2 <> 0 Then u(a2) = 0 j = 0 For i = 1 To n If u(i) <> 0 Then j = j + 1 w(j) = u(i) End If Next i FPuserSA = w End Function |
姫2 FPuserRAN関数
Public Function FPuserRan(w As Variant, n As Integer) As Integer '配列wの中要素の中で、ゼロでない要素の一つをランダムに返す '2023/10/26,10/27,10/28 Dim i, j, r As Integer j = 0 For i = 1 To n If w(i) <> 0 Then j = j + 1 Next i r = WorksheetFunction.RandBetween(1, j) FPuserRan = w(r) End Function |
※3 FPuserHenkon関数
Public Function FpuserKHenkon(b1 As Integer, b2 As Integer, n As Integer)
As Integer ' b1:回答者回答。b2:出題者開示 ' b1=b2の場合は、[1,2,3,,,n]のうちb1以外の要素の一つををランダムに返す ' b1<>b2の場合は、[1,2,3,..n]のうち、[b1,b2]にない要素の一つをランダムに返す ' nは配列の次元 ' 2023/10/26,10/27,10/28 If b1 = b2 Then FpuserKHenkon = FPuserRan(FPuserSA(b1, 0, n), n) Else FpuserKHenkon = FPuserRan(FPuserSA(b1, b2, n), n) End If End Function |
※4 FPuserSA2関数
Public Function FPuserSA2(a1 As Integer, a2 As Integer, n As Integer) As Variant ' マリリンの問題変形の出題者開示専用 ' a1:当たり、a2:回答者回答 ' v=[a1,a2]で、u=[1,2,3,・・n]のうち、a1を除く要素をwとして返す ' ただし、wは、最初にゼロで埋めておく ' 2023/10/27,10/28 Dim i, j As Integer Dim u(), w() As Variant ReDim u(n), w(n) For i = 1 To n u(i) = i w(i) = 0 Next i u(a1) = 0 j = 0 For i = 1 To n If u(i) <> 0 Then j = j + 1 w(j) = u(i) End If Next i FPuserSA2 = w End Function |
※5 FPuserHenkon2関数
Public Function FpuserKHenkon2(b1 As Integer, b2 As Integer, n As
Integer) As Integer 'マリリンの問題変形の回答者変更専用 ' b1:回答者回答。b2:出題者開示 ' b1=b2の場合は、[1,2,3,,,n]のうちb2以外の要素をランダムに返す ' b1<>b2の場合は、[1,2,3,..n]のうち、[b1,b2]にない要素をランダムにを返す 'nは配列の次元 ' 2023/10/27,10/28 If b1 = b2 Then FpuserKHenkon2 = FPuserRan(FPuserSA2(b1, 0, n), n) Else FpuserKHenkon2 = FPuserRan(FPuserSA2(b1, b2, n), n) End If End Function |
21世紀になって、すでに20年以上が経過しました。私は、21世紀に入ると、世界の多くの人々は、「宗教」の呪縛から開放されると考えていました。今、世界を見渡すと、まったく、そうは、ならなかったことを痛感しています。
アメリカにトランプ大統領が誕生した背景について、報道されるなかに、「福音派」というプロテストタントの人々の存在があったということからでした。キリスト教を信仰する中で、聖書の解釈を重視して、生活にも及ぼそうという集団になるとのことです。割合は、キリスト教を信じる人々の数十パーセントを占めるとの数字も挙げられました。なるほど、そのような人達の一部が公教育で、進化論を教えるな、とか、人工妊娠中絶を禁止するとか、私たち、日本人に理解しがたい運動につながっていることが分かりました。
また、アフガニスタンでは、アメリカ軍が撤退すると、たちまち、タリバンが政権に復帰し、女性の差別や就業の禁止、教育の制限など、次々とイスラム教の聖典の厳格すぎる解釈に基づく、統治を行いだしています。このような「原理主義」の跋扈は、イスラム教に特有の体質と考えていました。しかし、アメリカの福音派の動きを見ていると、程度の差はあれ、キリスト教も原理主義的な面を帯びることがあるし、実際、起きていることが分かりました。「エホバの証人」などの活動もこれらに含まれるのでしょう。
さらには、つい最近、イスラエルと境を接するパレスチナ暫定自治政府内ではあるが、武闘勢力ハマスが実効支配する「ガザ地区」からの大量のロケット砲とイスラエル側への一時侵攻をきっかけに、イスラエルが徹底した空爆と地上侵攻により、すでに、2023年10月末時点で、イスラエル側に1500人、パレスチナ側で、5,6千人の人々が命を失っています。来月には、より、深刻な犠牲が双方に生じるでしょう。パレスチナとイスラエルとの対立には、歴史的な経緯もあり、宗教だけが原因ではありませんが、少なからぬ、影響があることは、想像に難しくありません。このように、二千年、あるいは、それ以上も昔の人の教えに、しばられている人のなんと、多いことか!
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作成日:2023/10/30
内部リンクを追加:2023/10/31
3.(6)⑧参考を追記:2023/11/2
誤字・脱字を訂正:2023/11/3
章・節の番号を変更:2023/11/6