2016年6月のご挨拶

在ると見えるか?/見えると在るか? (HP編)

目次

(0) はじめに                HPの中には「在っても見えない」場合があること
(1) 外部リンクチェック          外部リンクチェックとそのエラー
(2) インターネット接続の障害の原因 インターネット接続に関する障害の主な原因
 注)IPv4 アドレスとは。          IPアドレスについて、ともちゃんが解説します。
(3) 障害個所の特定(特定のHPが見えない原因を内部で探る)
(4) 障害個所の特定(特定のHPが見えるかを外部の人に尋ねる) 
(5) 障害個所の特定(特定のHPが見えない原因をプロバイダーに尋ねる)
(6) 在ると見えるか? ホームページ
(7) 見えると在るか? ホームページ
(8) 終わりにあたって
(9) おまけ 裁判員制度反対

(0)はじめに

「今月のお題は、「在ると見えるか?/見えると在るか?」じゃ」

「むかし、やったことがあるわね。
 もう、6年前になるけど、「在ると見えるか?/見えると在るか?」(2010年4月)」

「おお、ともちゃんか。
 今年は、暑くなりそうじゃな。
 あのときは、いろいろな話題を取り上げた。
 一言で言えば、「概念」、「定義」、「法則」などは、「在るけど見えない」のに対して、物理的な「物」は、「在れば(いずれ原理的に)見える」というような話を書いた」

「あと、「心」は、在るけど見えないとか、「意欲」は、見えるか、見えないかとかね」

「たとえば、√2 などの無理数やi 虚数単位なども、最初は、概念なんだが使っているうちに、実在する物のように思えてきて使いこなすことができるようになることにも触れたのう。
 さて、今回は、主として、インターネット上のホームページ(以下「HP」とも書く)の「在るけど見えない」問題について、考えてみよう。
 最初に、なぜ、これを取り上げた理由を(差し支えない範囲で)書いておこう。
 実は、ここ数ヶ月~半年ぐらい前から、ある有名なA寺のHP が閲覧できないということが続いていたのじゃ。
 このお寺さんは、わしのHPの中の「情報検査リンク集」に掲載している寺の一つじゃがな。
 次節に述べるように、リンク切れを防ぐため、毎月1回、リンクをチェックしているなかで、この現象が確認されていたというわけじゃ」
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(1)外部リンクチェック

「リンクが生きているかどうかのチェックは、多数の外部サイトへのリンクがあるときは、手作業で行うのは大変じゃ。
 そこで、「ホームページビルダー」に備わる「外部リンクチェック」の機能を利用している。
 下図がその例じゃな。


 上図のように、この場合は、2つのサイトが「リンクエラー」と表示されている。
 このように、何らかのエラーが出た場合は、インターネットエクスプローラで閲覧できるかどうかを確認する。
 これにより、セシールやヨドバシカメラなどのように正常に閲覧できるものが大半じゃ。
 ヨドバシカメラなどは、セキュリティ対策のため、ブラウザソフト以外からの接続に対しては、応答を返さないので接続エラーと認識されるのじゃろう。
 しかし、A寺だけは、なぜか、「このページは表示できません」というエラーになってしまっていたのじゃな」

「表示できません、というエラーは、以前、よく見かけたよね」

「そうじゃな。
 インターネット接続のサポートや教室での講習の際に一番よく出る質問がこれじゃった。
 このようなときは、どの区間(個所)で障害が発生しているかを見極めることが大切じゃ。
 次節で、インターネットとの接続に関する障害(以下「障害」という)について考えてみることにしよう」
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(2)インターネット接続の障害の原因

「障害個所の切り分けね。
 パソコン(PC)側から順に主な原因を書いてみると、
① PCのハード/ソフトに障害がある
 ・ネットワークアダプタ(NIC)の故障(有線LAN) 
 ・LANケーブルのコネクタの外れや汚れ(有線LAN)
 ・セキュリティ対策ソフト(更新後にエラーの場合)
 ・OS(Windows Update後に異常の場合)
 ・無線LANの設定(IDとパスワードを変更した場合)
 ・IPアドレスが適切に設定されていない(IPconfig /allで確認)
  PC側のIPアドレスが、169.254.・・で始まる場合は、適切なIPアドレスが割り振られていない。
 ・ブラウザソフト(更新後に異常の場合)

② PCからルータまでの間の有線LAN/無線LANに障害がある
 ・LANケーブルの断線や内部の接触不良(有線LAN)
 ・無線電波の強度や周波数(無線LANの場合。PC側で確認)
 ・電波障害(無線の場合。ルータの置き場所近くの電気用品、近隣から競合する電波)

③ ルータに障害がある
 ・電源ケーブルが抜けている、コンセントが故障している。
 ・ルータ自身が完全に故障(電源が入らない)
 ・ランプの点灯色や点滅状態が正常時と異なる(正常時を撮影しておくと便利。取扱説明書で確認)
 ・ルータ側のLANケーブルのコネクタの外れや汚れ(有線LAN)
 ・ルータの設定の確認(PCからルータの管理画面を呼び出すことで確認)
 ・ルータの電源をいったん切って入れ直してみる

④ ルータからNTT等の回線事業者までの回線(メタル/光ファイバー)に障害がある
 ・ルータから光回線終端装置(ONU。光回線でルータと一体でない場合)との間のLANケーブルの障害
 ・NTTのフレッツ利用の場合は、NTTのサービス情報サイトを呼び出せるかを確認
 ・インターネット電話利用の場合は、電話の送受信が正常に利用できるかどうかをスマホ・ケータイ等で確認

⑤ NTT等の回線事業者からプロバイダーまでの間に障害がある
 ・NTT等の回線事業者のHP(NTTの場合は、サービス情報サイト)で故障・工事情報を確認

⑥ プロバイダー内部に障害がある
 ・スマホ等で確認可能であれば、プロバイダーのHPに障害情報が掲示されていないかを確認
 ・上記の手段が無理であれば、1~数時間、時間をおいて、再確認してみる。

⑦ プロバイダーからインターネットに接続するまでの間に障害がある
 ・プロバイダーのHPに障害情報が掲示されていないかを確認

⑧ インターネット上のサイトに障害がある
 ・スマホ等でも接続出来ない場合は、インターネットに大規模な障害が発生している可能性
 ・プロバイダーのHPに障害情報が掲示されていないかを確認
 ・個別のサイトが見えない場合は、URLアドレスが変更されている、更新中である等の原因を考える。
 などね。
 図で書く、下図のような感じね」



「これは、分かりやすいのう。
 ①~③までは、社内(家庭内)となる。
 ①の中で、ごく初歩的なものには、PCの電源が入っていなかったということもあった」

「まさか。
 さすがに、それは、ないんじゃない?」

「パソコンが起動しないというトラブルだから、インターネットに接続出来ない以前の話じゃな。
 その方は、ノートパソコンからデスクトップパソコンに乗り換えた方じゃった。
 ノートパソコンは、必ずしも、AC電源に接続しなくても内蔵バッテリーで動作可能じゃ。
 しかし、デスクトップは、そうはいかん、錯覚したんじゃろうな。
 ま、その場にいれば、子供でもわかると思うが、電話だけでは、こちらもまさかと思うからのう」

「②の無線LANの障害は、やっかいね」

「そうじゃな。
 まず、無線の電波が届いているかどうか、電波が届いていてもPC側の接続設定(IDとパスワード)が適切になされているか、という2つがあるからのう。
 有線LANでは、案外、LANケーブルのコネクタのPC側またはルータ側が外れているトラブルも多かった。
 また、①では、PC内のセキュリティソフトの更新後に障害が発生したことも記憶にあるのう。
 障害の発生により、インターネットに接続出来ないばかりか、パソコンが起動しないトラブルになったことがある。
 これは、NHKのテレビのニュースでも大きく取り上げられた」

「で、今回は、PCからインターネットに接続出来ないのではなくて、A寺さんのHP が表示できなかったのね?」

「そういうことじゃ。
 経験的には、⑧にもあるように、ほとんどが次の3つが原因じゃ。
 「URLアドレスが変更された」、
 「ホームページが更新中である」、
 「HPが閉鎖されている」、
 実際は、最初の、「URLアドレスが変更された」、というのがほとんどじゃが、最近は、少なくなった。
 比較的新しいドメインである JPドメインが利用できるようになった頃は、もっと多かったの。
 しかし、これは、グーグルなどの検索サイトを利用すれば、新しいURLアドレスを発見できることが多い」

「え~と、読者のために説明すると、
 URLアドレスというのは、HPのアドレス たとえば、www.tokyo-pax.com のようなものね。
 末尾に / (スラッシュ)を付けて、個別のページの区別を表すindex.html とかtop.htm とかのファイル名が必要だけど、トップページは省略可能なの。
 ただ「アドレス」というと、HPのアドレス、メールアドレス、IPアドレスも、あるので、HPのアドレスまたはURL(アドレス)と言えば紛れない。
 ついでに言えば、ドメイン名は、たとえば、tokyo-pax.com のようなものね。
 これに対して、IPアドレスは、xxx.xxx.xxx.xxx のような3桁数字×4列の文字列。(詳しくは、こちらで解説します)
 ところで、2つめの「更新中」と3つめの「閉鎖された」は、単純には、区別できないわね」

「何日か空けて、アクセスしてみれば、HPの更新作業によるものであれば、終了しているじゃろうから、閉鎖中とは、区別できる。
 また、検索結果で「閉店」、「倒産」、「合併」等に関する情報が付随的に得られることもある。
 ただ、今回のA寺の場合は、誰でも知っている有名な寺院なので、閉店とか倒産は、あり得ない。
 そこで、更新中、だろうと解釈しておったのじゃ」

「何日かおいて、アクセスしてみなかったの?」

「正直言って、こちらは、更新中と思い込んでいたのでな。
 そこまでは、確認してこんかった。
 A寺は、ドメイン名を取得していて、○○.or.jp のようにな。(○○の部分が寺院名のローマ字になる)
 このため、URL アドレスが変更されることは、まあ、ないと思われた。
 もっとも、インターネット草創期では、多くの寺社のURLアドレスは、www.プロバイダー名~○○、(~ は チルダ記号。○○は寺院名や個人名など)のようにドメイン名を利用されていないところも多かった。
 A寺も、その一つじゃったが、これは、だいぶ前の話じゃ」
(3)に進む

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注)IPアドレス(IPv4アドレス)とは。
 わたし、ともちゃんが解説しますね。
 長くなったので、お急ぎの方は、(3)節に進んでください。

 IPアドレスというのは、ネットワーク上のコンピューター(PCという)を区別するための数字なの。
 これまでは、そのv4(バージョン4)というのが、広く使われてきたのね。
 以下、インターネット上についてのIPv4アドレスについて解説するわよ。
 だけど、その前に、ちょっとだけ、脱線。

 それは、インターネットの最初の頃は、ものすごくたくさん用意したな、と思っていたアドレスの総数の約43億個なんだけど。
 どんどんと、インターネットが使われるようになってくると、残りが少なくなってきちゃったの。
 これが、IPv4 における「アドレス枯渇問題」というわけ。
 ところで、約43億個というのは、どういう数かというと、2^32-1≒約43億、なのね。
 2進数で32桁分を表しているというのは、分かる人は分かるでしょ。

 私たちが普通に使っているのは、10進数というものね。
 10進数では、記号として、0~9までの文字を使うでしょ。
 ここでは、小数点以下とかは考えないでね。あくまでも整数で考えています。
 これだけだと、太古の人々のように、最大9までしか数えられないので、10以上は、「たくさん」と言うしかないけどね。
 しかし、よく知られているように、「ゼロの発見」と「位取り」のおかげで、原理的には、どんな大きな数も、表せるようになっているわけ。
 すごいと思わない! だから、100 と 1 は違うことが分かるのよ。
 何もないところをゼロという文字で表したことで、位取りがすごく分かりやすくなっている。
 ゼロは、インドの人が発明したと言わているわよ。
 100は、1×10^2+0×10^1+0×10^0、の10のべき以外の数値を横に並べて簡潔に書き表していることに注意してね。
 これで、10進数の説明は終わり。

 次に2進数よ。人間は、おそらくは、10本の指を持ったことで、10進数になれているけど、PCは、2進数が得意なの。
 なぜって、電気信号は、あるか、ないか、の2つの値をとると考えるのが便利で、しかも、簡単だから。
 2進数では、文字を0と1しか使わないので、桁数は、増えてしまう。
 たとえば、10進数の 100は、2進数の表現では、1100100 となることが分かるかしら。
 右端を1桁目と勘定して k桁目の1文字(0または1)に対して、2^(k-1)、を掛けて合計すれば、10進数の数値になるでしょ。
 つまり、0×2^0+0×2^1+1×2^2+0×2^3+0×2^4+1×2^5+1×2^6+0×2^7=4+32+64=100、となる。
 逆に、100の2進表現を求めるためには、
 100を2^7=64、で割った商を求める。これは、1。
 次に、100-64=36を、2^6=32で割った商を求める。これも1。
 次に、36-32=4 を、2^4=16で割った商、2^3=8で割った商は、ゼロである。
 2^2=4で割った商は、1で、これで、残りが無くなったので、2^1及び2^0の桁は、0である。
 従って、1100100 が10進数の100の2進表現であることが分かるということ。

 すごい面倒だな、と思うでしょ。
 そこで、Excelでは、10進数を2進数に変換する関数があるの。
 DEC2BIN(数値,[桁数])というもの。
 これで、数値のところに、10進数を入れて計算させると2進数の表現が文字列として得られます。
 桁数を指定しないと、左側の余分なゼロは、つかない。指定した場合は、左側に必要に応じてゼロが挿入されます。
 ただし、数値は、512未満である必要。(後述の電卓を利用する場合は、制限無し)
 逆に、2進数を10進数に変換するのは、BIN2DEC(2進数の文字列)で10進数に変換できる。
 こちらも、2進数の文字列が、100000000 (10進数の511) 以下である必要がある。
 さてと、これで、32桁分の2進数で、2^32-1=4294967295、ここで、1を引いているのは、2^32は、ちょうど33桁に1で残りがゼロとなるため。
 約43億個という理由が説明できたと思うけど、どうかしら。

 ついでに書くと、Windows の電卓でも同様の計算はできるわよ。
 Windows 10では、UWP(Universal Windows Platform)に対応しているので、Windows アクセサリから移動しています。
 すべてのアプリから「て」のカテゴリーの「電卓」を選択するの。見かけなどが変わったので注意してね。

 標準では、こんな感じ。
 
 一方、三本線のところをクリックして、プログラマー電卓にすると、

 
 
100 と入力すれば、BIN にすでに、2進数が表示されるが、BINをクリックすると、電卓の窓に2進数が表示される。(下図)
 他にコピーしたい場合は、その位置で右クリックしてコピーして他の場所で貼り付ければ、いいということね。
 

 さてと、こんなに大きいと思っていた、43億個なんだけど、2011年の4月に在庫が無くなってしまいました。
 じゃ、新規にアドレスを増やしたい場合は、どうするかって。
 よくぞ、聞いてくれましたな。(あんたは、水戸黄門かい)
 プロバイダー間などで、アドレスの移転(売買)を行って、余っている組織から足りない組織にアドレスを移動することでしのいでいるのね。
 アドレスは、個人だけでなくたいていの会社もプロバイダーを通して、アドレスを買ったり借りたりして使っているの。
 家庭だと、プロバイダーより、アドレスがリースされる(貸し出しね)。
 これが「動的割り当て」というしくみ。ルータのWAN側アドレスというのがそれ。
 だから、ときどき、その値が変化することがある。これは、利用者が数字を選べないの。
 しかし、世の中には、固定的なアドレスを欲しい人もいるわけ。
 それは、自社サーバーに置いてあるデータをインターネット上に公開したい場合などよ。
 こういうときは、プロバイダーに追加料金を払うなりして、「固定IPアドレス」を使うのね。
 このとき、アドレスは、いつも一定なので、外から接続する場合に、便利になるの。
 あー、ここんとか、分かりにくいかも知れないけど、ごめん。
 本当は、DNS(ドメインネームシステム)の話もしないといけないけど、ややこしくなるのでパス。

 でも、アドレスの移転だけでは、枯渇問題の根本的な解決にはならないでしょ。
 そこで、現在、v4の後継である v6(バージョン6)のIPv6が次第に使われるようになってきたというわけね。
 あと、v4の次は、v5 となると思うかも知れないけど、v5は、テスト用として予約されていたんで、v6 が後継となったということ。
 v6のアドレスの総数は、2^128≒3.4×10^38 個となり、v4のアドレスと比較して、超すごい数となっています。
 つまり、32桁じゃなくて、128桁の2進数を使う。なんとも、太っ腹なことね。
 桁数は、4倍だけど、アドレスの総数は、2^128/2^32=2^96≒7.9×10^28 倍にもなるので気をつけてくださいな。
 そのため、v6では、インターネット上だけでなく、社内(家庭内)のPCや様々な電子機器に異なるアドレスを割り振ることもできちゃうのよ。

 さて、v4に話を戻します。
 アドレスは、インターネット上でPCを区別するための数字だったでしょ。
 0~2^32-1=429,4967,295 まで利用することが原理的に可能となる。(実際は、一部使えない数字はある)
 だけど、10進数にしても、2進数にしても、これでは、とても、見づらいわ。
 そこで、次のような工夫をして表記しています。
 元の文字列(2進数表現)⇒01111100100110110011000101010010、とすると、
 この32桁を8桁ずつ4つに区分する⇒01111100100110110011000101010010
 その各8桁を独立な2進数と考えて、10進数で表す。
 すると、
 01111100 ⇒124
 10011011 ⇒155
 00110001 ⇒49
 01010010 ⇒82
 となるので、これをドットで区切って並べると、124.155.49.82 という、ま、人間には、ちょっとだけ、分かりやすいものになるということなのね。
 これで、IPアドレスを、200.100..66.12 などと表記している理由が分かったと思うけどどうかしら。
 ところで、元の数字との関係は、というと、実は、この4つの文字列は、256進数と考えれば、いいのよ。(256=2^8)
 つまり、元のアドレスの10進表現=124×256^3+155×256^2+49×256+82、となる。
 で、まだ続きがあるのね。

 インターネットの参考書を読むと、よく、こんな表記に出会うの。
 124.155.0.0 / 12 、というような、アドレスの末尾に、スラッシュで区切って、数字が書いてある。
 これは、開始アドレス 124.155.0.0 から12 ビット分のアドレス、すなわち、124.155.16.0 までの範囲を表す簡易表記なのね。
 終了アドレスの 124.155.16.0 は、開始アドレスに、2^12 を足した数、
 124×256^3+155×256^2+0×256+0+2^12 ⇒ 124×256^3+155×256^2+16×256+0、とすれば、分かります。
 Excel で「商」を計算しようとするとき、VBAで使うような、商を求める演算子は、ないのよね。
 ワークシート上では、関数により、商= QUOTIENT(分母,分子)として計算します。(ちなみに、余り=MOD(数値,除数)で計算)。
 なお、開始アドレス 124.155.0.0 から12 ビット分のアドレスを求めるときに、下記のようにするのがお勧め。
 12ビットは、1000000000000 ですので、前述の記法では、0.0.16.0 と書けるでしょ。
 124.155.0.0 に 0.0.16.0 を各区切り毎に足すと、124.155.16.0 になるというわけね。
 このとき、区切りごとの和が256以上となった場合は、次の区切りに1を繰り上げます。

 最後に、プライベートIPアドレスを説明するわよ。
 実は、上で説明してきた、アドレスは、グローバルIPアドレスというもので、インターネット上で使われるもので重複は、許されないのね。
 しかし、家庭内や社内LANでは、一定の範囲内のアドレスを自由に使うことができるしくみが用意されていて、これがプライベートIPアドレス。
 インターネット上に公開されていない機器は、この内輪で使うアドレスを使うことで無駄なく、また、インターネット上から内部を隠す効果も期待されるという訳。
 プライベートIPアドレスは、
 10.0.0.0~10.255.255.255、
 172.16.0.0~172.31.255.255、
 192.168.0.0~192.168.255.255、
 の3つの範囲から使うことが決められています。
 社内(家庭内)のPCからインターネットに接続して利用する際に、プライベートIPアドレスとグローバルIPアドレスを相互に変換して使うしくみがルータに備わっているの。
 えーと、中途半端だけど、これで私の解説を終わります。
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(3)障害個所の特定(特定のHPが見えない原因を内部で探る)

「今年の4月末に、定期的なリンク切れチェックを行ったところ、A寺が依然として、リンクエラーとなっていることに気がついた。
 これまでは、勝手に「更新中」と思い込んでいて、特に考えてこなかったが、これは、さすがに不思議じゃと思うようになった。
 グーグルで検索してみると、当然じゃが、A寺の名称で検索できて、ドメイン名も同一じゃった。
 それではと、グーグルのクローラー(巡回ソフト)がA寺さんを巡回した日付を見てみると、5月の初めじゃった。
 これで、このお寺のHPは、在るけど(わしのパソコンからは)見えていない可能性が高くなった。
 まず、疑ったのは、①のPC側のソフト関係じゃ」

「インターネットエクスプローラで閲覧できないサイトとかあるんじゃない。
 ごく一部だけど、インターネットエクスプローラで閲覧しようとすると、断られちゃうサイトとか」

「うん。熟知しておるが、A寺が該当するとは思えん。
 わしが疑ったのは、IPv6 がらみのことではないかということじゃ。
 ともちゃんも知っているように、IPv4の新規アドレスは、すでに枯渇(2011/4)してしまっている。
 そこで、IPv6 の利用が始まっているのじゃな。(詳細は、LANLANパソコンの第51回「IPv6の無効化」をご参照ください)
 たとえば、A寺のHPがIPv6でのみ閲覧できる場合は、IPv4 のみを利用しているPCからは、接続出来ないのでな」

「で、A寺のHPのアドレスを調べたのね」

「そう。
 まずは、下図のように、コマンドプロンプト画面で、nslookup□www.相手方のドメイン名、と入力してみた。(□は半角スペース)



(上の例では、弊社のHPについて示す)
 すると、下のように IPv4アドレスが返ってきた。
 権限のない回答:
 名前: www.ドメイン名
 Address: xxx.xxx.xxx.xxx」

「この「権限のない回答」というのは、なんか、脱力感が半端ないけど、これってなんなの?」

「調べて見ると、当該ドメインのHPが置かれていないサーバーからの回答ということのようじゃ。
 つまり、分かりやすくいえば、「また聞き」ということじゃな。
 nslookup を対話モードで入力後、server 該当サーバー名 と入力後、www.ドメイン名のように入れてみると、権限のない回答という文言がつかない。
 ただ、HPが置かれているサーバー名が公開されている場合に限られるがの。
 なお、対話モードから抜ける場合は、exit と入力する」

「これで、A寺さんにIPv4 のアドレスがあるので、IPv6問題ではないと思ったのね」

「ま、そうじゃ。
 次に、わしのパソコンは、4月にWindows 8.1 Update からWindows 10にアップグレードしたのは、先月の記事にしたので知っておろう。
 OSによる違いがあるのかと思って、VISTA、7 でも確認してみた。
 しかし、いずれも、返ってくるのは、「このページは表示できません」という、つれないものばかりじゃった。
 3番目には、セキュリティ対策ソフトの影響を考えてみた。
 当方では、2種類のソフトを別々のパソコンで利用しているが、どちらでも同じ結果で、ソフトを一時的に無効にしても変わらないことを確かめた。
 最後に、ルータのセキュリティ機能を疑った」

「ルータの管理画面から確認したのね。
 ルータが、当該アドレスからの信号をブロックしているのではないかと」

「うん。
 一応、セキュリティのログを確認した。


 しかし、特に手がかりになりそうなログは、見つけられかった」

ここで、突然、脇道ですが、皆さん、ルータにパスワードを設定していますか?
 ルータは、外部との通信の出入りの要なので、ここをコントロールされると大変ですよ。
 そこで、ルータの管理画面から、パスワードをしっかりと設定してください。
 また、無線機能のあるルータは、有線側からのみルータの設定を変更できるようにしておくことをお勧めします
※設置時・購入時には、PASSWORD などの簡単なものになっています。
※設定したパスワードは、紙に書いてルータ本体に貼っておきましょう。
※ルータのパスワードは、インターネット接続用のパスワードとは違ったものにしましょう。
※ユーザー名は、root、user などと機器によって最初に決められていて変更できないものが多いです」

「付け加えると、ルータのファームウェアを最新のものに保つことじゃ。
 もっとも、これは、初期設定で「自動更新」になっていることが多いが、確認しておいて欲しい」
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(4)障害個所の特定(特定のHPが見えるかを外部の人に尋ねる)

「わしのところだけでは、どうにも、らちがあかないので、知り合いに A寺のHPを閲覧できるかどうかを確認してもらうよう依頼したのが5月の半ばじゃ」

「なんか、ちょっと唐突よね
 どんな理由にしたの」

「いや、確かに、いきなり感は否めないがったがの。
 ま、正直に、A寺のHPを閲覧できないので、確認して欲しいと頼んだ。
 2名(Xさん、Yさん)は、正常に閲覧可能じゃった。
 1名(Zさん)は、初日は、閲覧できたが、翌日から閲覧不可となった。
 また、Zさんが、自宅では不可でも、勤務先では、正常に閲覧できたと知らせてくれたのには、驚いた。
 これを聞いて、わしは、A寺のアドレス宛に、トレースを試みた。
 コマンドプロンプト画面で、tracert□www.ドメイン名、と入力する。


 
 上図がA寺さんの場合じゃ。
 最後の方で、タイムアウトしました、となって、完了しない。
 一方、弊社のHPの場合はというと、


 となって、トレースが完了する」

「ping コマンドもあるよね」

「うん、ping アドレス または ping□ドメイン名、のように使う。
 ただ、pingに応答を返さないようにしているサーバーもある。
 弊社のHPの場合は、こんな感じじゃな」


「pingでも、だめだったのね」

「そのとおりじゃな。
 こうなると、所属するプロバイダーにより閲覧の可・不可が決まってくる感じになってきた。
 当時の状況を表にすると、次表の通りじゃ」

ユーザー  閲覧  プロバイダー  備考 
不可  A社  数ヶ月から半年ぐらい前からか?
Xさん  可  Y社    
Yさん  可  B社   
Zさん 初日は可
翌日から不可 
?  原因判明後にプロバイダーがA社と分かる 
Zさんの勤務先 可  ?   
Zさんのスマホ 可   
私の携帯 可  ドコモ  iモード 


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(5)障害個所の特定(特定のHPが見えない原因をプロバイダーに尋ねる)

「こうなってくると、プロバイダーのA社が、A寺のHPからの通信をブロックしているのではないか、という疑問が出てきた。
 そこで、A社の技術サポート宛てに次のように問い合わせを行った。
 『A寺のHPを表示しようとすると、このページは表示できません、と表示され接続不可です。
 インターネットエクスプローラの画面に表示されている「接続の問題を修正」というリンクをたどって修正を指示すると、このコンピューター上で1つ以上のネットワークプロトコルが不足しています、と表示されます。
 さらに、修復を指示しても、ネットワーク接続に必要なWindows ソケット レジストリエントリが不足しています、と表示されて、やはり、接続出来ません』とな」

「3名の結果も知らせたのね」

「具体的な個人名は伏せて、関係するプロバイダーの名前やスマホや携帯では可となることは、知らせた」

「で、どうだったの」

「1日経過して、おおむね、次のような回答をいただいた。
 ----------
 弊社検証回線で「A寺」のホームページを閲覧したところ、お客様と同じように表示ができませんでした。
 調査の結果、「A寺」のホームページが運用されているサーバーのセキュリティ対策により、弊社をご利用のお客様からの通信がブロックされてしまっていることがわかりました。
 特定のお客様へのブロックではなく、ある程度の範囲へのまとまったブロックのようです。
 弊社よりサーバー運営会社にブロック解除を依頼しております。

----------」

「ブロックは、ブロックでも、逆だったのね」

「そう。
 A寺さんのHPが置かれているサーバー側からのブロックじゃったのだな」

「なるほど。
 Zさんは、最初は、閲覧できても、翌日は、閲覧できなかったというのは、ZさんのプロバイダーもA社だったということね」

「鋭いのう。
 そのとおりじゃ。
 つまり、わしらのルータに割り当てられるIPアドレスは、プロバイダーから配布されるものじゃ。
 普通は、「動的」に変わるアドレスが割り当てられるので、日々変化していることが多い。
 そのため。割り当てられるアドレスによって、相手方のサーバーでブロックされている範囲の外と内とで分かれる可能性がある。
 そのため、閲覧できたりできなかったりしたのじゃろう」

「現在は、A寺さんのHPは、表示できているのね」

「うん。これは、ある意味、たまたまじゃ。
 レンタルサーバー業者は、プロバイダーA社のすべてのIPアドレスに対するブロックの解除は、できないと言ってきているそうじゃ。
 従って、今後も、閲覧できない可能性は、ある。
 正直、先方の業者の対応には、驚いたが、プロバイダーA社の見解の骨子は、次の通りじゃ。(寺の名前は、A寺としている)
-------------------------------------------
 『ホームページの管理・運営方法は、当該ページの所有者(管理者)の判断に任せられます。
 この度の場合ですと、「A寺」のホームページの管理者が、何らかの理由により、弊社のIPアドレスからの閲覧を拒否していると思われます。
 弊社では、お客様が快適にインターネットをご利用いただけるように、努めておりますが、各ホームページの公開範囲等を強制することはできません。
 これは他のインターネットサービスプロバイダーでも同様と思われます。
 有益なホームページの閲覧に制限が設けられていることは残念ではございますが、これは当該ホームページ所有者様の判断となりますため、何卒ご理解を賜りますよう、お願いいたします。

--------------------------------------------
 わしは、A寺のHPを閲覧できなくても、差し支えは、ないんじゃが、多くのインターネット利用者の方が閲覧できないことは、問題じゃと思う。
 このことを A寺は、ご存じなのかどうかな。
 折を見て、正常に閲覧できない人たちが複数いることを知らせてあげたい。
 ところで、これを、きっかけに、インターネットのHPにおける「在ると見えるか?/見えると在るか?」問題を考えてみた。
 そのあたりを次節で簡単に触れよう」

「さすが、おじぃさん。
 転んでもただでは起きないわね」
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(6)在ると見えるか? ホームページ

「前節までの結果により、インターネット上のHPは、在っても見えない場合があることが分かった」

「そうね。
 でも、非公開サーバーとか、特定の人だけに公開されているサーバーとかはあるのは、当然よね。
 ショッピングサイトや銀行などにも、ログインしないと見えないページがあるわ。
 アンダーグラウンドな外国のサイトなど、セキュリティや法律の関係でブロックされている場合もあることは、分かっているから、在るけれど見えないのは、不思議ではないでしょう」

「しかし、公開されている、正規のHPなんじゃぞ。
 まあ、これが、中国国内などのユーザーであれば、外国のサイトの一部が閲覧不可だったり、国内のサイトも政府の意向で随時閉鎖されたりしているから、「在るけど見えない」HPがあるのは、当たり前と思うじゃろう。
 しかし、日本国内で、公開されているHPを長期にわたって閲覧できないユーザーが大勢いる、というのは、新鮮な驚きじゃった。
 こうなると、わしらのインターネット上の視界の広さは、何パーセントぐらいかという、疑問がわく」

「国内のサイトに限っても、調べるのは、無理でしょう」

「逐一あたるというのは、ソフトウェアを使っても大変なことじゃ。
 それに、こちらから見えるが、別のプロバイダーからは見えないサイトは、それでは、発見できないしな。
 当方の情報検索リンク集は、15個のカテゴリーに、20から200程度の主として国内のサイトへのリンクがのっておる。
 仮に100ずつとすると、1500個のサイトがあるわけで、今回、偶々、見つかったのは、1つじゃったから、見えない割合は、最大でも、1/1500≒0.06パーセント、となる」

「企業なんかで、自社のHPが見えないユーザーがいると困るわね」

「死活問題ともなりかねない。
 A寺の場合は、もう少し、早く誰か気がつかんったかな、という正直な思いはある。
 ただ、あまりに有名なお寺さんなので、公式HP以外にもインターネット上に情報が多数ある。
 そのため、逆にここまで長期化しているのかも知れない」

「どうしたらよいのかしらね」

「そうじゃのう。
 自社でサーバーを運用している会社は、自社で管理できるので、自社側でブロックしてしまうことは起きにくいじゃろう。
 しかし、ある特定のプロバイダー側でブロックされている場合は、自社では、分からない。
 レンタルサーバーの場合は、レンタルサーバー業者に確認する程度かのう。
 いずれにしても、社員等が各自の自宅で確認するというアナログ的な対処方法が限定的ながら、費用がかからずに有効かも知れんが、小規模の企業、団体などでは、従業員が少ないとか、地元以外の他地域のプロバイダー利用者については、調査しきれないじゃろう」

「有料になるでしょうが、国内の大手・中堅のプロバイダーに個別に依頼して、自社サイトを、たとえば年に数回とか定期的に確認してもらうのがいいかも知れないわね」
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(7)見えると在るか? ホームページ

「HPが見える場合は、在るでしょう」

「ま、今は、見えるものは在る、というのが正しいじゃろうな。
 むかし、インターネット草創期の頃は、定額接続制度がなかったので、インターネットに接続しないでHPを閲覧するということがよく行われた。
 この場合、いったん接続したものの(だから過去には在ったものじゃが)を接続せずに見ていたことになる。
 その際、実際に再読み込みすると、なくなっている場合もあり得る。
 このような例外的なケースは、「見えるけど(今は)ない」と言えるじゃろう」
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(8)終わりにあたって

 今回もご覧いただきありがとうございました。
    Windows 10 の無料アップグレードの期限が迫ってきました。
    マイクロソフト社によれば、期限は、2016年7月28日です。アップグレード希望の方は、早めの対応が必要でしょう。

    期限後のアップグレードは、有償となります。
    5月現在のヨドバシカメラ価格では、ダウンロード版のWindows 10 のHomeは、19,000円、Proは、27,860円となっています。
    なお、上記は、「通常版」の価格ですが、アップグレード版は、現在、発売されていません。
    では、次回も、本欄で元気にお会いできますことを願っています。
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おまけ 裁判員制度反対

2016年5月21日の読売新聞の朝刊に次のような記事が掲載されていました。
 それは、「裁判員制度」の発足から7年になり、年々、辞退者の割合が増えているというものです。
 辞退率は、2009年の発足時は、約53%であったが、2016年の1月~3月期では、約66%になっているとのことです。
 海外諸国の再調査を行うという報道もされておりました。あきれてものが言えません(だからこうして書いているんですが ^^;)。
 まあ、裁判員の辞退者が増えるのは、当然でしょう。
 下記の記事にも書きましたが、参加人数が多けれぱ、多いほど、より公正な裁判が行われるというのは、幻想です。
 素人が100人集まっても、1人の凡庸な医者の代わりにもならないのと同じです。
 裁判官の意見に、ただ賛成するなら、裁判員は、必要ありませんし、ただ反対するなら邪魔者です。
 また、被害者の事情をくみ取りすぎて、量刑の変動が大きくなり過ぎるのも問題です。高裁で判断が覆る事例も起きています。
 逆に、裁判官だけであれば、証拠不十分で無罪となるところが、被害者に対する同情のあまり、有罪となり得るケースがあるとすれば、えん罪を増やす元となり、それこそ災判です。
 本制度は、法務省と最高裁等の高位の裁判官の一部が強く推進したことにより、国会、マスコミも賛同して成立・施行されてしまいました。
 しかし、地裁の裁判官の人たちの中には、実際は、反対の考え方を持つ方も少なからずいると推察します。
 今回の読売新聞の記事は、マスコミも本制度に諸手を挙げて賛成するばかりではなくなってきている現れではないでしょうか。
 以前、本欄では、3回も、「裁判員制度反対」と言っていたのにこの体たらくとは・・・。
 法務省は、司法試験制度改革で、法科大学院も推進しましたが、こちらも失敗した感が大きいでしょう。
 いずれにしても、法務省の「シミュレーション力」の欠如は、深刻です。

 「シミュレーション力の不足を憂う」(2008年5月のご挨拶)より一部を抜粋しました。
 『裁判官、検事、弁護士は、市民感覚が不足している(!?)ので、市民が(しかも重大事件の裁判に)参加して、裁判をより良くしましょう」と考えているとすると、それは、間違っているのではないか。 
 裁判に携わる人たちに(本当に!?)市民感覚が足りないならば、研修等で補っていきましょう、というのならば、分かりますが、「裁判に市民が参加」、というのは、たとえて言えば、医療現場では、医師の独断的な行動が目立つ(?)ので、「市民が診察や治療に参加」するに等しい愚挙かと思われます。
 これについては、マスコミも何となく、市民参加=民主的、という図式にだまされているのではないか。
 これは、理念のみが先行して、実態を考えない(見ようとしない)法務省の独断ではないでしょうか。
 すなわち、シミュレーション不足、想像力不足です。いかに「模擬裁判」を重ね、法廷の席を新調してみたところで、あるいは、「裁判員参上」を「裁判員誕生」などと看板を掛け替えてみたところで、国民の理解は、得られますまい。
 このようなことがまかり通ると、何にでも、直接、市民が参加することが民主的なんだ、という、理念は正しいかも知れないが、とうていその実現方法が間違っているとしか思えない考え方が蔓延します。
 それは、かつて、党委員会が何事にも口を挟んだ国々の二の舞でしょう。 現代社会は、基本的には、分業社会です。直接民主主義ではなく、間接民主主義が基本でしょう。』


 「社内SNS/裁判員制度/サマータイム」(2008年6月のご挨拶)
 これを掲載した後、それをご覧になったK先生から次のような書き出しのお手紙を頂戴しました。
 『6月のご挨拶にあった裁判員制度発足反対論は、よくぞ言ってくれたと感心しています。賞賛します。私は、根が「法律や」ですから、書き出すと様々な論点から反対の根拠がありますが、いつ、それを公にするか迷っています。
 しかしながら、K先生は、その後、急逝され、残念ながら、その言葉は、表には、出ることは、ありませんでした。

 「裁判員は災判員か?」(2008年11月のご挨拶)より、青字部分を抜粋しました。
  『裁判員の参加により、司法の民主化を推進するという旗印の下、副次的効果として、裁判日数の短縮化などが挙げられていますが、本当の目的は、むしろ、そちらにあるのではないかとも推察されます。
 すなわち、裁判員を長く拘束しておくのが難しいことを理由に、いたずらに裁判日数の短縮化、効率化のみを推進することは、むしろ、真実を覆い隠してしまい、誤判の恐れを増すようにも思えます。それこそ、まさに、「災判」です。
 本制度が、いずれ、早期に終了となり、実に馬鹿馬鹿制度であったと、後日、評されることは、まずは、間違いないところかと思いますが、裁判を「災判」としないためには、計画をいったん延期するなり、中止するなりして、よく考え直すことが最善でしょう。』


 早急に本制度を廃止して、地裁の裁判官と国民に余分な負担を掛けないようにしましょう。
 法曹を目指す人たちに市民感覚が足りない(これも本当なのか、という疑いを持つべきですが)ならば、司法修習生の研修体制等をあらためる方がコスパが大きいのではないでしょうか。
 また、このような制度が簡単に誕生してしまうのは、国会だけでなく、審議会に大いに問題があると思えます。
 裁判に市民を参加させる余裕があるのであれば、このような審議会に市民を参加させるか、あるいは、もう少し、実際的な案としては、「委員」を広く、公募すべきでしょう。
 委員長や事務局の意に沿わないかも知れない委員も入らないといけないのではないでしょうか。
 「審議会は、その道の権威者が参加するもので、一般市民は、専門知識がないので、お断り」であれば、専門知識が無くても参加できる「裁判」って何なんでしょう。
 そして、そんな「裁判」に携わっている裁判官、検事、弁護士の先生方っていったい?、という世にも不思議なこの奇妙さを誰か説明して下さい。

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作成日 2016/5/29
一部を変更 2016/9/21

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