会員の皆様へ(2015年12月のご挨拶)

今年の漢字は「不」か?

今年もいろいろありました

「ようやっと今年も終わりになるな」

「今年もいろいろ、あったわね。
 おじさんも大変だったし」

「ともちゃんかい。
 まあ、そうじゃったな。
 振り返ると、まず、頭に浮かぶのは、「テロ」じゃ。
 1月には、ムハンマドの似顔絵を掲載したフランスの出版社「シェルリ・エブド」の襲撃から始まり、日本人ジャーナリスト 後藤さん、湯川さんのアルカイダによる殺害事件など枚挙にいとまがない。
 まさに、「不合理」主義者により、「不運」な人たちが犠牲になり、国際社会を「不安」に陥れておる」

「11月にも、パリで大規模なテロがあったばかりだからね」
「欧米だけでなく、アフリカでもイスラム原理主義者によるテロが激化している。
 フランスのテロ以降、作られつつあるシリア・イラクのイスラミックステートISに対するロシアを含めた国際的な連携は、トルコによるロシア爆撃機の撃墜事件により、「不協和音」が出てきている」

「私たちも、しばらくは、紛争地域への「不要不急」の海外旅行は、控えた方がいいかも」

「2001年9月11日のアメリカ同時多発テロの後、当時のアメリカ大統領だったブッシュ氏が「テロとの戦い」を唱えたが、ここまで「不穏」な事態が拡大するとは、「不覚」にも予想できんかったな。
 国際社会の「不撓不屈」の努力が求められるのう」

「難民、特にシリアの人たちの問題が重大化しつつあるし。
 自爆テロ犯に「不惜身命」という言葉は使いたくないわ」

「感染症では、前年に続き、リベリア、シェラレオネ、ギニアでエイズウイルスが猛威を振るったが、年末になり、ほぼ収束しつつある。
 当事国やイギリス、フランス、アメリカ、我が国などの国際社会の支援が功を奏した。
 今後は、ワクチンや治療薬のいっそうの開発や普及が求められる」

「感染症では、韓国で「MARSウイルス」による死者が多く出た年ね」

「幸い、日本では、感染者が出なかったが、運が良かった面もあるじゃろう。
 日本の自然災害では、昨年に続き、火山の心配事が多く出た年でもあった。
 5月の箱根山の警戒レベルアップ、口之永良部島の新岳の噴火、6月の浅間山の小規模噴火など、他にも活動が活発化している火山が増えてきている感じがするのう」

「火山噴火そのものは、「不可抗力」だけど、被害を最小化するためには、「不断」の努力が必要だわね」

「自然災害では、台風で鬼怒川の堤防が決壊したために起きた大規模水害も記憶に新しい。
 自衛隊、海上保安庁、消防署等の「不眠不休」の救助活動により、幸い、少数の犠牲者で済んだが」

「夏休みだったかしら、大阪の寝屋川市の子供達に対する「不審者」による事件もあった」

「うん。
 その事件は、1ヶ月近く、連日、テレビで報道されていたが、防犯カメラの威力は、よく分かった。
 きびすを接するように、8月末には、東京の中野署管内で、若手女優さんの殺人事件があった。11月末現在、未解決じゃ。
 (その後容疑者逮捕:下記注を参照)

 一方、横浜では、マンションの傾きという「不具合」から、思いがけずに、くい打ち工事の手抜きや工事の管理の「不手際」などが蔓延していることが分かった。
 またしても、3人並んでお辞儀をすることになったのう」

「まったく。懲りない面々。
 1社の1人の問題ではなく、全国の工事会社や担当者に波及する事態となっているけど、「監理」は、名ばかりだったとしか言えないよ。
 あと、日本年金機構の大量データ流出事件でも、3人並んでお辞儀をする始末になったわ」

「悪いニュースばかり挙げるのは、気が引ける。
 良いニュースも挙げよう。
 2015年のノーベル賞は、日本から、「医学生理学賞」に大村智先生、「物理学賞」に梶田隆章先生が選ばれた。
 「不朽」の業績じゃ」
「選挙権が18才に引き下げられ、来年の選挙から、実施されることになったわね。
 高校でも、政治的な活動がある程度認められるというし、模擬選挙なども高校で行われている」

「学生紛争が活発に行われた時代から見ると、様変わりじゃな。
 ま、「不偏不党」というのは、たやすいが、こと、政治については、1面的な見方ではなく、多角的な見方も身につけてほしいものじゃ」

「北陸新幹線の開業も、明るいニュースだったわね」

「そうだのう。
 国産ジェット機の初フライトやH2Aロケットによるカナダの商業衛星の打ち上げ成功などのニュースもある。
 アベノミクスによる日銀の金融緩和等により、株価も上昇している。
 また、2015/12/28には、日本と韓国間に横たわっていた、いわゆる「従軍慰安婦問題」の抜本的な解決について、両政府間で合意がなされたことは、明るいニュースだ
※青字部分は、2015/12/28に追記しました。
  なお、声明では、「不可逆的」、という文言が強調されていて、偶然にも、「不」が使われていましたね。

※2016年3月12日に容疑者逮捕のニュースがあり、遺体に残されたものと同一のDNA型の持ち主とのこと。
 容疑者は、被害者のマンションから300m程度離れた地下鉄中野富士見町駅近くのマンショに、事件当時、住んでおり、事件後、福島県の実家に帰っていた。
 なお、一部のネットで話題になっていた劇団関係者でもなく、同一マンションの住人でもなかった。
 ホント、憶測で、みなさん、いろいろと書きすぎだと思う。(2016/6/4 追記)

不定方程式

は、次に続く言葉を否定するので、どちらかというと、マイナスのイメージの熟語が多くあるな」

「確かに。
 前節に挙げた以外でも「不労所得」、「不完全燃焼」、「不当逮捕」、なども、すぐに思い浮かぶよね」

「似たような漢字に「」や「」もあるが、ここでは、これ以上、立ち入らないことにしよう。
 一方、学問の世界では、「不変量」、「不定方程式」など、マイナスのイメージではない言葉もあるがのう」

「不定方程式といえば、少し以前だけど、「フェルマー予想」(フェルマーの最終定理あるいは大定理ともいう)が解決されているわね」

「そうじゃったな。
 最終的な解決は、手元の本では、1995年の頃じゃったとのこと。
(「数学を変えた14の偉大な問題」(イアン・スチュアート:水谷淳 訳:SBクリエイティブ:2013年10月初版)
 フェルマー予想は、x^n+y^n=z^n、には、n>=3では、整数解がないというものだが、肯定的に解決された」

「フェルマー予想が公になったのは、1630年頃とのことなので、約360年ぐらいかかった訳か。
 すごいことね」

「そうじゃな。
 まあ、フェルマー予想が証明されても、世の中には、影響はないが、同書によれば、フェルマー予想の解決に払われた努力は、数学の発展に大きな力になったとのことじゃ。
 今回、上の年代などを調べた時に、類似の方程式には、解があるものがあることが分かった。
 たとえば、x^4+y^4+z^4=w^4、などは、オイラーによって提起され、オイラーは、整数解がないと予想した。
 これを「オイラー予想」と呼ぶが、近年、下記の解が見つかった。
 x=2682440、y=15365639、z=18796760、w=20615673、は、上記の方程式を満たす」

「検算は、手計算では、とても大変だけど、DERIVEでは、簡単ね」

「とはいえ、しらみつぶしに、計算しても、この解は、容易には、見つからんじゃろう。
 歴史的には、x^5+y^5+z^5+w^5=v^5、の整数解が1966年に発見され、その後、1986年に4乗の方の解が見つかったとのこと。
 ちなみに、5乗の方の解は、x=27、y=84、z=110、w=133、v=144というものじゃ。(具体的な数値は、ウィキの「オイラー予想」による)
 こちらは、比較的、小さい数の範囲で見つかった」

「カタランの方程式、x^m-y^n=1の非自明な整数解は、x=3、y=2、m=2、n=3、であり、そのときに限るというのが、カタランの予想だったけど、2002年に解決されていたのね」

「フェルマーの最終定理ほどは、世間では話題には、ならなかったようじゃが、数学界、特に整数論の分野では、大きな衝撃だったようじゃ」

終わりにあたって

 今回もご覧いただき、ありがとうございました。
    では、来年も、また、本欄で元気にお会いできますことを願っています。

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