会員の皆様へ(2007年8月のご挨拶)

火災報道記事の価値

目次

 ノウゼンカズラの花
 火災報道記事は何のためにあるのか?
 未明の火事は死傷者が多い
 原因をなくすことも大切だが被害を最小限に食い止めることが大切
 火災報知器や消火器の有無も記事に記載して欲しい
 火災原因の特集と対策記事を
 終わりにあたって

ノウゼンカズラの花

例年よりも1月近くも早く、6月には拙宅の「ノウゼンカズラ」の花が満開になりましたが、この原稿を書いている7月末の時点では、すべて散ってしまい、つぼみもほとんど無くなってしまいました。
 ノウゼンカズラは、中国原産の渡来植物で中国名を「凌霄花」というのだそうです。
 広辞苑を引いてみると、--
 りょう【凌】とは、しのぐこと。こえること。「凌駕・凌雲」 などの熟語がある。
 なるほど、熟語では、「凌駕(りょうが)」は、お目にかかりますね。
 また、しょう【霄】は、こちらは見なれぬ漢字ですが、「大ぞら。天空。蒼空。天際」を表す言葉とあります。
 すなわち、凌霄花とは、「青空をしのぐ花」というような意味なのでしょうか。
 そう思ってみると、艶やかなオレンジ色の花弁と旺盛な蔓状の幹の勢いなどから、大空と張り合って咲いているようです。
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火災報道記事は何のためにあるのか?

「新聞」を開くとたいてい、火災で人が亡くなったという記事があります。
 人が亡くならなかった火災は、よほどの火災でなければ、新聞には載りません。
 中には、一家全員が焼死したという、痛ましい記事もあります。
 しかしながら、多くの記事の末尾は、「火事の原因は現在、消防と警察で調査中であり」というように終わっています。
 調査は、いずれ終了(原因が判明することも不明のままということもあるでしょうが)するとは思いますが、その結果が新聞に掲載されることは、まず、ありません。
 とすると、この記事の価値は、いったい、どこにあるのでしょうか?

 確かに火災の犠牲者の住所・氏名は、掲載されてます。
 知り合いの方などは、記事をご覧になり、駆けつける事もあるでしょう。
 ですが、それは全国民のほんの一部に過ぎません。
 かなりの方が、「また、火事があったのかい。火には気をつけな、いかんな」という程度の感想を持つだけでしょう。
 また、それ以外の人は、ちらっと見て、なにも思わずに次の記事に目を移すだけのような気がします。

 いや、これでは、もったいない。
 紙面のかなりのスペースを使っているのに。もったいない。
 なるほど、火災で亡くなられた家族の状況や系図は、分かります。
 あるいは、「みんなに好かれていた良い子やったな」とか「道で会うとよく、挨拶をするお父さんだった」というようなことは、よく分かるのです。
 「お気の毒」、という記者の気持ちは、こちらにも伝わってきます。
 しかし、冷たい言い方になりますが、この記事は、読者にのためにどのようなご利益があるのか、という視点が欠けているように思えます。
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未明の火事は死傷者が多い

家の者ともよく話すのですが、死傷者があり、新聞に載るような火災は、なぜか、未明に起きていることが多いようです。
 午前3時とか4時に家の中で火災が起きると煙に巻かれて逃げ遅れて、大事に至るのでしょう。
 ここでは、一家無理心中や放火のように外から火を付けるようなケースは、除外して考え、漏電や家族のものの不注意、あるいは、タバコの火の不始末のような原因で火災が起きた、というような場合を想定します。
 「マッチ一本、火事の元」という標語は、有名ですが、この意図するところは、火事の原因を絶とうという考え方であり、そのこと自体は、もっとも大切なことです。
 しかし、人の不注意を完全になくすことはできませんし、漏電のような単純な不注意によらない火災を防ぐことは、なかなか、難しいものです。
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原因をなくすことも大切だが被害を最小限に食い止めることが大切

前述のように火災の原因を絶つことは重要なポイントですが、火災が起きたときにすみやかに消火や避難ができれば、死傷者を出さずにすむわけです。
 従来の考え方だけでは、限界があります。
 そこで、つい先頃、消防法(総務省消防庁:http://www.fdma.go.jp/index.html)が改正され、
 新築住宅については、平成18年6月1日から、既存住宅については各市町村条例により、平成20年6月1日~平成23年6月1日の間で設置義務化の期日が決められました。
 ちなみに東京都23区内の既存住宅については、平成22年4月1日(2010/4/1)までと定められています。
 火災報知器の設置場所は、台所、全居室、階段に各々一つ以上となります。
 火災報知器で火事を消し止めることは難しいですが、死傷者を最小限に食い止める効果は、大きいでしょう。
 なんでもアメリカの例を引くのは、気が差しますが、アメリカでは、1970年代から義務づけられていたとのことです。
 まあ、良いことは、どこの国の例であろうと真似て悪いわけはありません。ドンドン、真似るべきでしょう。
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火災報知器や消火器の有無も記事に記載して欲しい

昨年からスタートした上述の制度であるので、ほとんどの火災で報知器があったという例は、ないかも知れませんが、せめて記事の中で火災報知器や消火器の設置についての啓蒙を行って欲しいと思います。
 記事を読んだ方が、このことに気づき、報知器や消火器を設置するようになり、それにより、火災による死傷者が減少するという良い循環を作っていく、そのような記事の内容が望ましいですね。

火災報知器の設置例
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火災原因の特集と対策記事を

火災の原因は、多岐にわたります。WEBでは、消防庁のページをはじめとして紹介されています。
 しかし、それらを参照する方は、おのずと関心がある方でしょう。
 是非、新聞で半年に1回ぐらいは、火災による死傷者撲滅に資する特集記事を組んでいただきたい。
 それが亡くなられた方への本当の供養になると思うのです。
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終わりにあたって

 今回もご覧いただき、ありがとうございました。
 関東地方も梅雨が明け、ようやく本格的な暑さがやってきたようです。皆様、お元気でお過ごしください。
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