会員の皆様へ(2006年2月のご挨拶)

地球日傘計画

日経バイトが休刊

昨年末のことですが、あまりにも突然、日経BP社より刊行されていた「日経バイト」誌がなくなりました。
正確には、「本誌記事に見るコンピューティングの21年」という特集記事を掲載した2006年1月号をもって休刊となりました。
 日経バイト誌は、1984年10月に創刊されており、創刊号からの読者の一人として、愛惜の感を禁じ得ません。
 私がパソコン(当時はマイコンと呼ばれていました)を購入したのが昭和56年(1981年)の年末でしたので、同誌の刊行期間は、ほぼ、それと重なるわけです。このあたりの状況は、「コンピュータ事始め」の続編としてまとめる予定ですが、現在のようにパソコン情報誌が数多く出版されていなかった当時としては、重要な情報源でした。
 当時、私は、「日本マイコンクラブ」に所属しており、そこから発行されていた「マイコンサーキュラ」という月刊誌も情報源としていました。マイコン間通信やパソコン通信のための通信プログラムなどが掲載されていたりして、大いに参考にしたものです。
 ちなみに、日本マイコンクラブは、現在の「(社)日本パーソナルコンピュータ利用技術協会」に発展的に解散したようです。
 ただ、日経バイト誌が刊行された頃から「マイコン」から用語も「パソコン」に変わり、その使用目的も趣味中心から次第に業務中心に移り変わっていく時期でもあり、私の中でも日経バイト誌の占める比重が大きくなっていきました。
 パソコンの数、質、用途は、当時から見ると飛躍的に拡大している中での今回の休刊という事態は、インターネットの普及と無関係ではないでしょう。というよりも同誌の息の根を止めたのは、皮肉にもインターネットであったといってよいでしょう。
 以前、私が「オープンソースとボランティア」で書きましたような危惧が具体化してきたようでもあります。
これは、同社から発行されていました「日経Windows プロ」(旧 日経Windows NT→日経WINDOWS2000)がほぼ、同時に休刊になったことからも伺えるように思えます。
 このような意味で2005年は、パソコンと私たちの関係にとって一つの時代の節目として記憶されることになるでしょう。

諸行無常と一期一会

「祇園精舎の鐘の声 諸行無常の響き有り」というのは、どなたでもご存じの平家物語の冒頭です。
永遠に不滅というものは、この世に存在しないというのが、お釈迦様の悟りであったわけです。
であるからして「今」を大切に、あるいは茶道で言われている「一期一会」という言葉が重みをもって迫ってくるのです。
 地球やあの太陽でさえも不滅ではなく、もしかすると宇宙自身も発生消滅を繰り返しているかもしれないことを思うと、今、この瞬間さえも、きらきらと輝いて見えなければ、ならないはずです。
 どうせなくなってしまうの「だから」どうでもよい、のではなくて、やがて、なくなってしまうのであるから「こそ」、「今」が大切なのだという視点の切り替えが悟りなのでしょう。

夢物語

地球温暖化、あるいは、気候変動の防止は、私たちの生存にとって、もっとも緊急な課題の一つです。
いわゆる温室効果等により地球の平均気温が上昇しているであろうことは、ほぼ、確実です。
気温の上昇に伴う海水温の上昇により海中深くにあるメタンハイドレートが揮発するようになるとさらに温室効果は、促進されることになります。
 ですので、せめて、炭酸ガスを中心とする排ガス規制により温室効果を緩和しようというのが国際的な流れになりつつあるわけです。
 しかし、このような流れを理解できない(理解しようとしない)国や人たちもいることは、確かで、徐々に加速されている温暖化を止めることは、当分、できそうにありません。
 そこで、いっそのこと、太陽からのエネルギーの流入を減少させ、温暖化を止めようというのが、ここで取り上げる夢物語です。命名して「地球日傘計画(Earth Sunshade Project)」です。

地球日傘計画とは

いうまでもありませんが、地球に生命が誕生したのは、ほどよい気温に恵まれたためで、太陽からの光等のエネルギーにより地球に熱が注入され、宇宙空間への赤外線、熱線の放出により、その収支が保たれているという事実によるものです。
太陽からの熱がこなくなれば、地球は、たちまち、凍てついた星に変わってしまうでしょう。
 太陽からのエネルギーの一部をカットできれば、温暖化防止に効果的なことは、いうまでもありません。
地球に日傘をかぶせようというのが「地球日傘計画」です。ここが夢物語なのですが、全く不可能というわけではありません。
 それは、火山の噴火により気温が低下したという事実があるからです。
噴火では、大量の火山ガスや火山灰が成層圏に吹き上げられそれによる太陽光線の遮蔽により気温が低下することなります。
 このような微粒子は、太陽からの可視光線の透過は、妨ぎますが、可視光線より波長の長い赤外線、熱線などは、透過させます。このような選択的な透過効果の有無は、微粒子の大きさによるところが多いでしょう。
あまり小さいと炭酸ガスと同様に温室効果を助長してしまうでしょう。
 ただし、仮にこのような効果がある微粒子を成層圏や亜成層圏に置くことができたとしても、いったん、放出してしまったものを取り去ることは、できないという点がなんと言っても最大の欠点です。
 万一、その微粒子の効果が大きすぎるとか、人体に有害であったとしても元に戻すことができないからです。
 そこで、もう少し、コントロール可能なプランとしてアルミニウム箔のような薄い金属箔を地球の赤道上空に大面積で展開するという考えがあるかも知れません。
 地球の半径をR、赤道の幅をLとして箔の地上高さをHとすると箔の面積は、2π(R+H)Lのオーダーとなります。
また、箔の厚さをd、密度をρとすれば、その質量は、2πRL×d×ρとなります。
 たとえば、R=6370×103メートル、H=36000×103メートル、L=100×103メートル、d=1×10-7メートル、ρ=3×103キログラム/立方メートルとすれば、その質量のオーダーは、約800万トンとなります。
 これは、幅100キロメートルですべて覆った場合ですが、覆う割合を1パーセントとすれば、8万トンとなります。
現在の人工衛星の質量は、重くても10トン程度ですので、人工衛星を8000個上げることになります。
 上記では、静止衛星の軌道に置いた場合ですが、もっと低いH=100キロメールと程度とすれば、大略、1000個程度に軽減はされます。
 更に節約するためには、地球の太陽に面した側だけに配置することが当然、考えられます。地球の自転と逆向きに地球と同一の大きさの角速度で回転させれば、必要な質量は、半分以下になります。地球の夜の側からの放熱の妨げにもなりませんので、一石二鳥です。
 いずれにしても現段階では、かなり困難であることは、察せられます。

終わりにあたって

では、今月は、ここまで。
 今後も時間ができましたらば、随時、更新していきたいと思います。
皆様、お元気でお過ごし下さい。

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